Correspondents' Eye on Tokyo:
世界的インフルエンサーのラ・カルミナが惹かれ続ける東京の魅力

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 ラ・カルミナ氏は、日本のサブカルチャーを紹介するブログ「LaCarmina.com」を運営、同ブログは世界中のメディアやファンから支持されている。インフルエンサーや作家として幅広く活躍する彼女が、東京に魅了される理由は何なのか。
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ラ・カルミナ氏は東京の多様なサブカルチャーが持つ流動性に感化されているという。

--日本のポップカルチャーのどんなところに惹かれ、なぜそれについて書こうと思ったのですか?

 10代の頃からずっとゴシックカルチャーに惹かれていました。その美学と音楽が好きだったんです。幼い頃に家族で日本を訪れたこともあって、日本の文化も大好きでした。とても衝撃的で刺激を受けました。人々の服装、かわいいキャラクター、食べ物、そしてポップカルチャー全般が、カナダのバンクーバーのものとはまるで違いました。

--初めて東京を訪れたのはいつですか?また、どのような体験が心に残っていますか。

 いつのことだったか定かではありませんが、おそらく5、6歳の頃だと思います。お寺の近くにあったお店にとても惹かれたことを覚えています。動物が好きで、今でもそうなんですが、ウサギの描かれたカーテンやハンカチを買いました。それから、サンリオショップが小さな女の子にとっては天国のようでしたね。

--東京のサブカルチャーのどんなところが好きですか?

 東京のサブカルチャー界の人たちは、とにかく温かく受け入れてくれます。ダークなメイクやファッションのために「閉鎖的にパーティーをしている」とか「見た目が威圧的だ」とか感じる人もいるようですが、実際には彼らは全然そんなことはありません。みんなとても歓迎してくれますよ。

--東京の若者文化とサブカルチャーは、どのように関係していると思いますか?

 互いに影響し合っていると思います。外部から見ると、美意識として着飾っているのか、それともサブカルチャーやスタイルに強く共感しているのか、よくわからないところことがありますよね。答えは1つではありませんが、たとえばゴスロリもあのような服装の人の中には、ゴシックカルチャーとは関係なく、単にスタイル上の選択としてダークなルックスが好きな人もいます。他方で、そのライフスタイルや音楽のすべてを愛している、根っからのゴス好きという人もいる。それが東京のサブカルチャーのいいところだと思います。つまり、流動性が高いのです。

--日本の文化とゴスカルチャーに関連性はありますか?

 関連性はあると思いますね。その他のサブカルチャーやファッションにも、日本らしいひねりが加えられていますから。着物に日本的なロリータの要素を加えたり、和服に合わせるような髪飾りが使われていたりします。オッズオンというブランドは、それがとても上手で、和服に見られるような生地の裁断や重ね着に、未来をイメージしたサイバーゴシックスタイルを融合させています。

--世界中のさまざまな都市を旅されているようですが、東京に惹かれ続けているのはどんな魅力があるからですか?

 日本にはたくさんの友人がいます。個人的な関係性や経験があって、それが私にとってすべてです。温泉やお寺、日本各地を旅するのも大好きです。

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東京のサブカルチャー界の人々の温かさ、開放性と受容性が、ラ・カルミナ氏が長年にわたってこの街を繰り返し訪れる理由となっている。

--日本のファッションで最も評価する点は何ですか?

 非常に高い創造性と奇抜さ、そしてディテールへのこだわりです。ハンドメイドの要素やさまざまなものをうまく組み合わせる能力があり、ゴシックやパンクといったカテゴリを超えてきます。そういったものは、欧米のサブカルチャーには見つけることができません。東京でゴス系のパーティーに行った時には、手作りのペチコートや羽つきのまつげ、豪華なヘッドドレスを身につけた人たちと出会いました。ディテールや美意識へのこだわり、固定観念をはるかに超えて自分を表現できる力が、この文化の特徴だと考えます。

--東京で洋服をよく買いに訪れる場所はどこですか?

 もちろん、原宿のラフォーレです。地下には「アリス・アンド・ザ・パイレーツ」や「ベイビー・ザ・スターズ・シャイン・ブライト」など、ゴスロリやパンクの主要なブランドが揃っています。どれも定番のブランドですね。それから、インディーズのデザイナーを訪ねるのも好きです。小さな店舗を運営しているサブカルチャー界の人々に会いに行くことを何よりも優先しています。その1つが危機裸裸商店で、コルセットや帽子、バッグなどがあります。カーニバルの人形にダークさが組み合わさったようなイメージに近いかもしれません。

--過去から現在に至るまで、好きな日本人デザイナーを教えてください。

 アリス・アウアアやモワ・メーム・モワティエです。どちらもゴスロリの定番ですね。黒と青のビクトリア調のアンティークドールのようなスタイルで、ボンネット(帽子)やパラソルなどと合わせるんです。

--東京でお気に入りの穴場的な場所と、その魅力について教えてください。

 小規模のニッチなバーがいくつかあります。その1つが中野にある大怪獣サロン。1960年代の怪獣映画に出てくる怪獣をテーマにしていて、熱烈なファンが集まって、怪獣と戦うテレビ番組を古いVHSテープで見ているんです。怪獣のコスプレをしている人までいますよ!グーグルで検索してもなかなか見つからないし、日本でできる奇抜なことのリストにすらあがってこないでしょう。

--そのほか、これから東京を訪れる旅行者に伝えたいことはありますか?

 言葉が通じなくても、知り合いがいなくても、怖がらないで、と言いたいですね。たとえば、パンクのクラブやゴス系のコンサートに興味を持ったら、とにかく行ってみて!このアドバイスどおりに行動した人たちは誰もが素晴らしい体験をしています。東京には驚くほどの温かさ、開放性と受容性があります。それがこの街の素晴らしさです。

ラ・カルミナ

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ファッションと旅のブロガー。CNN、タイム誌、ビジネス・インサイダー、ハフポストなど、世界中のメディアで取り上げられている。『The Little Book of Satanism: A Guide to Satanic History, Culture and Wisdom』など4つの著書がある。日本のゴシックとサブカルチャーに関するブログ「LaCarmina.com」は、2016年にオグジリアリ誌の年間最優秀ブログ賞を獲得した。
取材・文/ローリエ・ティエナン
写真提供/LaCarmina.com
翻訳/前田雅子