世界に選ばれる東京を目指し、大丸有エリアで英語プロジェクト始動

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 皇居と東京駅に挟まれた、大丸有(大手町、丸の内、有楽町)地区。戦前からビジネス街として栄え外国人観光客の集まるこの東京の中心地で、東京都と地域団体がタッグを組み、多様な人々との英語での対話や交流が生まれる街を目指す。
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皇居の森の後ろにそびえ立つ、大丸有エリアの高層ビル。Photo: Yukinori Hasumi/Getty images

明治時代に作られたビジネスの中心街

 古くから東京の中心地区として栄えてきた大丸有(大手町、丸の内、有楽町)エリアだが、そもそも丸の内エリアが今のようなビジネスの中心地となりはじめたのは明治時代のこと。

 江戸時代には大名屋敷が立ち並んだが、明治維新以降には一変。いちどは軍用地となったものの、陸軍移転後には皇居近くゆえ建築基準が厳しいという理由から活用されずに荒れ地となっていた。この一帯を「ロンドンのような西洋式のビジネス街に」と買い取り、開発を始めたのが三菱社の岩崎彌之助だ。明治終わりには14棟のビルが建ち「一丁倫敦(ロンドン)」と呼ばれるようになったという。

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明治末期に建った14棟のうち、第12号館(左・現新東京ビル)と第13号館(右・現富士ビル)。「一丁倫敦(ロンドン)」と呼ばれた。Photo: Courtesy of Mitsubishi Estate

 大正時代に入り、東京駅が開業して交通インフラが拡充するとオフィス需要は急速に高まり、1923年には旧丸ノ内ビルヂング(丸ビル)が開業。急行エレベーターを導入し、ショッピングモールをオフィスビル内に併設した実用性重視のアメリカ型ビルだったことから「一丁紐育(ニューヨーク)」とも呼ばれるように。第二次世界大戦では大きな被害を受け、残ったビルも戦後すぐに占領軍に接収されたが、その後、世界でも有数のビジネス街として発展を遂げた。

外国人観光客が滞在するインバウンド中心地に

 ビジネス街として栄えた反面、平日のみ人が集まるオフィス街とかつては言われた大丸有エリアだが、2002年に建て替えられた丸の内ビルや丸の内仲通りなどを中心として、この20年の間に休日にも人が集まるエリアへと変貌。ショッピングや観光などを目的にインバウンド観光客も楽しめるエリアとなってきている。

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休日にも人が集まり賑わうようになった、丸の内仲通り。Photo: Courtesy of Mitsubishi Estate

 東京ステーションホテル、パレスホテル、帝国ホテルなど古くからある日本のホテルに加え、フォーシーズンズホテル、ザ・ペニンシュラ、アマン東京と世界の一流ホテルが立ち並ぶこのエリアに20234月には八重洲側にホテルブルガリもオープン。海外からの観光客は今後も増え続ける見込みだ。

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古い建物と新しい建物が並ぶ。高級ホテルも数多あるビジネス街には外国人観光客も多く滞在する。Photo: K2_keyleter/Getty images

インタラクティブな英語で、より魅力的な東京へ

 国際的な競争力を高めるべく英語力アップを目指す東京都が、この大丸有エリアに注目し地元企業や団体と共同で立ち上げたのが「T.E.A.M.大丸有(Tokyo English Adventure Movement」。英語をツールにして地域の魅力を高める狙いだ。

 2023年2月には、小池都知事、三菱地所株式会社社長の吉田淳一氏が登壇してのキックオフイベントが開催された。小池都知事は「世界の都市の競争が高まる中で、東京が選ばれる都市になるよう魅力を増すには、東京がもっと英語で発信できる都市になる必要がある」とT.E.A.M.大丸有立ち上げの意気込みを語る。

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「英語はパスポートのようなもの」と小池都知事(左)。三菱地所株式会社社長の吉田氏(右)は、丸の内の「インタラクションの活発な街づくり」について語った。
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キックオフイベントでは、寿司を挟んでネイティブスピーカーと会話する「英語de寿司」(写真)や「英語deスポーツ」などの体験ブースが賑わった。

 吉田氏は「東京駅や皇居がある大丸有エリアは、日本を代表する都市観光の一大拠点としても海外の方から人気がある。老若男女、様々な人を受け入れ、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンを意識し、世界に開かれた街を作ろうとしている」と大丸有エリアの取り組みをアピールした。

 コロナ禍も収束に近づき、海外とのリアルな交流が増えていくであろういま、東京都と大丸有エリアが手を組み、世界に向かって発信できる街、世界から評価される街TOKYOを目指す。

取材・文/田内しょうこ