Correspondents' Eye on Tokyo:
ペットも快適な東京での生活

突然の決断と新たな展開
キャリアの大半をアジア地域でのニュース取材に費やしてきたスミス氏は、これまで各地を転勤し、時に予想外の事態にも直面してきた。それでも過去3年の急激な変化には戸惑ったという。2018年から上海を拠点に取材活動を行ってきたスミス氏。2020年には、中国政府と母国オーストラリア政府の政治的対立に巻き込まれ、愛するボストンテリアのヒューイを上海に残したまま、パートナーと共に急いでシドニーに戻らなければならなかった。だが、スミス氏は仕事の都合上アジアに拠点を置かなければならず、幸運なことに編集者が彼にぴったりの場所を見つけてくれた。
「担当編集者から『上海のオフィスは閉鎖して、別のところに移転させる必要がある。東京に行かないか?』と言われました」とスミス氏は振り返る。「もちろん、すぐにこう答えました。『パートナーに相談をしてみますが、是非行きたいです。東京はみんなに愛されている街だから』と」
東京に移ると、スミス氏はすぐに、中国の友人の元にいた犬のヒューイを呼び寄せるために動き始めた。「彼を中国から出国させるのに1年かかりましたが、日本に犬を連れて来るのは、それほど大変なことではありませんでした。その点はとても良かったと思っています」と語った。スミス氏とヒューイが成田空港で再会した時の動画はインターネット上で大きな注目を集め、ヒューイはちょっとした有名人(犬)になってテレビ出演まで果たした。スミス氏は「中国から帰ってきた体験を本に書いたけれど、みんなが注目したのは犬の方だったんです!」と冗談めかして語った。
犬との散歩で東京の魅力を発見
再会を果たし、コロナ関連の規制が少し緩和されるとすぐに、スミス氏とヒューイは東京の街に散策に出かけた。「特に中目黒には素晴らしいバーやレストランがたくさんあったので、ここでかなり多くの時間を過ごしたし、多くの友人も訪ねてきました。素晴らしいところです」と彼は言う。そして中目黒が満足させてくれるのは、人間だけではない。ヒューイがすぐに東京になじめたのは、この街が犬にとっても質の高い生活を送れる場所だからだとスミス氏は気づいた。「東京は犬にとっても素晴らしい街です」と彼は熱弁する。「ある意味で、オーストラリアよりも犬を飼いやすい場所です。カフェやレストランは犬を連れて入れるところが多く、キャリーバッグに入れれば一緒に電車に乗ることもできるのには、とても驚きました」

犬を飼っている人にとって、近くに緑の多い場所があることは重要だ。スミス氏はヒューイとの毎日の散歩の中で、街のあちこちに公園や自然があることを発見した。目黒区の有名な菅刈公園は、彼にとってお気に入りのスポットとなった。「毎朝ヒューイと一緒に菅刈公園に行くんです。とても美しいところですよ。衛生基準がとても高く、誰もがとても清潔で、自分の犬にきちんと目を配っているんです」と彼は述べる。緑があるのは地上だけではない。スミス氏は、街を見渡すことができる目黒天空庭園もまたお気に入りのスポットだと語った。

スミス氏は、東京のペット文化に驚いたという。「大いに興味を引かれ、感心しています。うちの近所にも犬のハイドロセラピー施設があるし、高級なグルーミングサービスを提供しているところもたくさんあります」と彼は語る。英語が話せる獣医も、すぐ近所で見つけた。「中目黒には素晴らしい動物病院があるんです。彼らは本当にプロフェッショナルで親切です」と彼は語った。地元の愛犬家コミュニティーにもすぐに馴染むことができた。「犬を連れていると、知らない人が近づいてきて話しかけてくれるんです。地元の人々と交流するいい方法だと思うし、ヒューイがいなかったらそれができていなかったと思います」
東京に来てからかなりの時間をコロナ関連の制限の下で過ごしてきたスミス氏と家族は、今この大都市の魅力を発見し始めたところだ。「東京はまさに世界都市という感じで、ニューヨークやロンドンにいる時と同じような感覚です。巨大な街で幾つもの地域があって、無限の魅力があります。東京にこれだけ多くのユニークな地域があるところが大好きですし、あまりに大きい都市なので、その全ての魅力を発見することは不可能だとさえ思えます」
マイケル・スミス
写真/ローラ・ポラコ
翻訳/森美歩