高品質なフルーツに着目し、起業の夢を実現。

商品開発のストーリーを想像できる楽しいビジネスを創りたい

　私は大学でマーケティングを専攻し、その重要性を知り、魅力を感じるようになりました。マーケティングを学ぶと店頭に並ぶ商品を見る目も変わります。商品が作られた背景や、流通の裏側にある事情などを考えるようになり、商品が生まれたストーリー、わくわくするような仕掛けや工夫を面白いと感じるようになってきました。そして、商品を手に取った人が、楽しくなるようなビジネスを創り出したいという想いが強くなっていき、いつか自分で事業を興したいと思うようになりました。

　そうは言っても具体的に、どんな事業をいつ始めようと決めていたわけではありません。まずは実社会での商品や資金の動き、流れを知る必要があると思い、外資系消費財メーカーにマーケターとして就職しました。メーカーでは、マーケティングや営業などの複数のセクションで、物流や商品開発などの経験をしました。そのひとつが輸出入を手掛ける貿易業務です。シンガポール法人に出向する機会に恵まれ、海外での仕事を経験するなかで、良質な日本製品を海外市場で展開するビジネスには大きな可能性があることを知りました。そして、現地法人の同僚と一緒に起業することを決めました。

アイデアを具体的な事業計画へ進化

　法人を立ち上げた後に業務内容の方向性を探ろうと考えていましたが、具体的にはどうすれば良いのかわかりませんでした。そんなときTOKYO創業ステーションを知り、まずTOKYO起業塾を受講して、ビジネスプランの作り方や財務知識などを学びました。

　次に利用したのはTOKYO-DOCAN（※）という起業家育成の連続プログラムです。ビジネスアイデアを具体的なプランとしてプレゼンテーションをするプログラムで、貿易をすることは決めているけれども、なかなか前に進めなかった私にとっては好適なカリキュラムでした。例えばセミナーの序盤では、自分が好きなものと好きではないものをリストアップするというシンプルなタスクがありました。そこから、自分のやりたいことがクリアになって、ビジネスの方向性が明確になりました。また起業にあたっては、コンシェルジュによる起業相談を利用しました。事業化を進めるにあたってアドバイスをもらいたいと思ったからです。すべてをひとりでやっていたので、事業の方向性を相談でき、壁打ち相手となってもらえる専門家の存在は非常にありがたかったです。

　9年間勤めた会社を退職し起業に向かって踏み出すために、TOKYO創業ステーションの支援メニューはとても役立ち、有意義だったと感じています。

　そして、シンガポールでのフルーツ販売に活路を見いだすことができました。しかし、日本市場で買付けできる商品には農家が従うべき「規格」があり、もっとおいしい果物が存在するのにもかかわらず、生産者のこだわりやストーリーがある商品を市場から仕入れることが難しい現状がありました。

　そこで、こだわりを持って作っている生産者と直接契約して、商品とその良さを海外へ伝える販路を構築することにしました。直接契約することで仕入価格も抑えられ、何より農家さんに輸出先での反応を伝えたときに喜んでもらえることも嬉しいことのひとつです。『NEWTRAIL』という会社名も、新しい販売の道筋を作りたいという理念から生まれました。

販路と顧客を拡大して新たな商品展開にもトライしたい

　現在はシンガポールへのフルーツ輸出が安定稼働中で、今後は強みである海外ビジネスの知見を活かして、調達・物流・販売の量と質を上げていきたいです。輸出実績を増やし、日本と海外の橋渡しになりたいと思っています。

　事業としては、輸送コスト、オペレーションに課題があり、まだ利益性が低い状況です。フルーツは見た目がきれいで、いわゆる「映える」商品です。今後はSNSなどを利用した広告宣伝も考えています。そして、長期的にはフルーツ以外の商品展開も計画しています。

※TOKYO-DOCAN：約2ヶ月・全7回の講義で、アイデアの着想・ブラッシュアップから事業化までを体験できる、起業家の「たまご」のためのプログラム。令和5年度の開催は未定。

代表取締役／横山龍太郎

2012年慶應義塾大学商学部卒業後、ユニリーバ・ジャパン株式会社入社。シンガポール法人所属時に貿易業務に携わり、日本の生産品の海外市場でのチャンスを再認識。9年間の勤務を経て2021年8月に退社し、個人事業主としてスタート。2021年10月に輸出商社、株式会社NEWTRAILを立ち上げる。AIBA認定貿易アドバイザー。