Tokyo Embassy Talk:
イスラエル外交官を魅了した音楽の街・下北沢

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 イスラエルの外交官、バラク・シャイン氏が、母国のバンドを通じて知った下北沢や都内を散策する楽しみを語ってくれた。
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駐日イスラエル大使館の報道官・広報室長のバラク・シャイン氏。東京千代田区にあるイスラエル大使館にて。

-- 文化的に活気のある下北沢に特別な思いがあるそうですが、なぜですか?

 来日前に、イスラエルのバンド、ガーデン・シティ・ムーブメントが下北沢について歌った曲『Miss You (Under Shimokita Sky)』を聴いたことがきっかけです。それで、東京に来た時に下北沢へ行ってみたいと思いました。このバンドは最近、都内のライブハウスでライブを行い、熱烈な観客と盛り上がりました。

 下北沢は、東京で最もクールなエリアの一つで、流行の先端をいく街として知られていますね。私は、週末に屋外で開催される中古品のマーケットに行くのが好きなんです。東京に来る前は、中古品を買うのはあまり好きではありませんでした。どこからやってきたのかわかりませんからね。でも、日本人は物を大切に扱うため品質もいいので、日本の中古品は信頼できます。今では、何か買おうと思ったら、まず中古品のウェブサイトや店をチェックするようになりました。

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複雑な構造の都市にもかかわらず、東京の交通機関は綿密に計画され、便利であると話すシャイン氏。

-- 他に都内のお気に入りのエリアはどこですか?

 東京は、地域によって雰囲気が異なるところが魅力です。谷中銀座のレトロさや、自由が丘のヨーロッパ的な雰囲気、神楽坂で味わえるフュージョン料理も好きですね。

 私はいつも、東京を訪れた人を増上寺に案内して(都市に混在する)新旧のコントラストを見てもらっています。本堂の前に立つと、その背後にある東京タワーや高層ビルが一つのフレームに収まって見えるんです。変化し続け、活気あふれる東京のダイナミックさが見事に表現されています。近代的な開発が進む一方で、増上寺のように不変のシンボルも残されています。東京には、伝統的な木造建築、時代を超えた工芸品、小さな商店などが何世代も続いています。

-- 東京で暮らす魅力はどんなところですか?

 東京での生活は本当に便利です。東京の交通機関は、利用者の多さに関わらず、世界でもトップクラスです。世界有数の大都市でありながら、スムースに機能していますね。電車は時間に正確で、効率的な交通網のおかげで、私はおおいに助かっています。他の国や都市に戻るなんて考えられません。

 また、効率のいい郵便や配送などの他のサービスも非常に迅速で便利です。それから、東京の人々は思いやりがあります。日本では英語が通じないと聞いていましたが、私はこれまで困ったことはありません。言葉の壁にぶつかった時でも、必ず誰かができる限り英語を駆使して助けてくれるのです。こうした人々の前向きな姿勢が、東京での経験を一層楽しいものにしてくれています。

-- イスラエル大使館は、日本独特の「ゆるキャラ」文化を取り入れています。これについて詳しく教えてください。

 私たちの大使館には、マスコットキャラクターのシャロウムちゃんがいます。名刺にも描かれており、オリーブの枝を持ったオウムをモチーフとしたものです。2013年当時、駐日大使館としてマスコットを作っているところはあまりなかったですが、イスラエルの親善大使としていまも活躍してくれています。大使館のイベントでもなくてはならない存在で、一般の人々と積極的に交流しています。特に東京の皆さまからは大変な人気で、とても愛されているのですよ。

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2022年11月、日本とイスラエルの外交関係樹立70周年記念レセプションに登場したシャロウムちゃん。Photo: courtesy of 在日イスラエル大使館

<イスラエルの魅力>

Q1. 一度は訪れてほしいというイスラエル。どんなところを見てほしいですか?

イスラエルで驚きに満ちた旅を楽しんでいただきたいです。3つの宗教の聖地エルサレムでは古代の魅力を味わい、現代建築と賑やかなLGBTQシーンで知られるテルアビブでは、活気のあるコスモポリタンな雰囲気に浸ることができます。2023年3月に、成田空港からテルアビブへの直行便の運航が開始されたので、歴史と現代文化が融合するイスラエルへのアクセスが便利になりました。

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イスラエル、テルアビブの街並み。 Photo: Adam Jang via UNSPLASH.

Q2. イスラエルについて知ってもらいたいことはありますか?

イスラエルというと、政治や紛争のニュースを連想されがちですが、他にもさまざまな魅力があります。観光や食文化に加えて、イスラエルはスタートアップとテクノロジー分野の活気ある経済的エコシステムを誇っています。日本とイスラエルの企業間の協業も、過去10年間で急増しました。また、2023年2月に東京都が主催したイベント「シティテック東京」には、テルアビブを拠点とするスタートアップ企業3社が参加しました。

バラク・シャイン

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2020年に、在日イスラエル大使館の報道官・広報室長に就任。多彩な経歴を持ち、生物学と東アジア研究の学位を持つ。現職以前は、2016年に北京に移住し、北京語を習得。その後、在中国イスラエル大使館に上席政治担当補佐官として勤務。日本文化に触れることにも情熱的で、これまでに28の都道府県を訪問している。現在は日本語と和食の習得に打ち込んでいる。
取材・文/ゾリア・ペトコスカ
写真(人物)/中野アンニ
翻訳/長沢光希