ポストコロナ:東京のグローバル人材市場
コロナ禍の企業向け助成金
外出や旅行制限などにより、新型コロナウイルス感染症は世界中のビジネスに大きな打撃を与えた。それは日本も例外でなく、他国のような強権的な外出制限を行わなかったとはいえ、多くのビジネスが営業時間の短縮等を迫られた。特に外食産業においては、事業を完全に停止するか否かの選択だったとネイグル氏は指摘する。
ネイグル氏自身がジープラスメディアで経験したことは、広告収入が急激に減ったことだった。そして他企業に勤める知人の経験を振り返り、先行き不透明な状況でも企業は依然として社員をサポートしていたと話す。「企業は売上や業績の低下を覚悟していました。そのような状況にあっても、多くの企業が業績低迷の責任を従業員に負わせることなく、最善を尽くしていました」とネイグル氏は説明する。
東京都は小規模事業者の窮状を考慮し、補助金による資金援助や融資などを実施した。また、事業停止や新型コロナウイルス感染拡大により大きな影響を受けた企業に対しては、給付金を支給した。
日本におけるアフターコロナの展望
ネイグル氏によると、日本におけるアフターコロナ時代への兆しは2022年後半から顕著になったという。日本の水際対策が大幅に緩和され、自由に海外旅行ができるようになったのが2022年10月11日だ。この日を境に「本格的にビジネスを再開したいという社会のムード」を察するようになったという。
求人市場においては、データが彼の所感を裏付けている。「ガイジンポット」での求人応募者数は2022年に比べて23%上昇し、新規求職登録者が45%増えていました」
世界のどこでも状況は同じで、日本の一部の企業は、今、従業員をオフィスに戻そうと躍起になっている。しかし、ネイグル氏によると、東京などの都市部に拠点を置く多くの企業が、必要に応じたオンサイトワークとリモートワークを組み合わせた"ハイブリッドワーク"を提案しているという。
「ガイジンポット」の求職リストや他社が運営する求職サイトのいずれにおいても、多くの企業が積極的にリモートワークを促進しているとネイグル氏は指摘する。「(企業にとって)ハイブリッドワークは間違いなくメリットと捉えられています」
パンデミックに関係なく、東京をはじめ日本全体の求人市場では、引き続き国際化がトレンドとなっている。観光地としてだけでなく、働く場所として日本の人気が回復傾向にある。「日本は(外国人求職者にとって)"キャリア形成の地"として人気があります。その理由は、日本が安全で安定した社会であり、生活水準が高いこと、そしてポップカルチャーがあることがメリットだと考えられているからです」とネイグル氏は説明する。
外国人求職者へのアドバイスとして、多くの企業は外国人の消費者や顧客にリーチするために外国人を採用していることを念頭に置くとよいという。そのため、外国人向けにサービスを提供する旅行業界や、外国人の常連客を持つレストラン、そして自動車の輸出や電子商取引、テレビゲームのローカリゼーションなど、製品を海外へ輸出するビジネスに外国人雇用の高い需要がある。さらにネイグル氏は、タクシー運転手やツアーガイドといった職種にも注目している。
日本国内でもグローバル化が進み、英語や多言語でのサポートも増えている。日本が"働きながら暮らす地"として、特筆すべき場所だとネイグル氏の評価は高い。だが、日本に興味を抱く外国人求職者に対して、彼が勧めるのは「より良いチャンスを得るためには、日本語と日本文化を勉強すること」だ。そのうえで、企業が日本人の従業員に対して英語教育を支援するように、外国人の従業員に対しても日本語教育を支援してほしいと願っている。
東京に長く暮らすネイグル氏自身も、東京という都市がアフターコロナ時代をどのように終わらせるのかに関心を寄せている。「東京が日本とアジアの重要な拠点として、ビジネスや観光、そして文化の世界的な中心地として発展するとともに、日本らしさを残しながらも新しい時代のモデル都市となることを願っています」
ライアン・ネイグル
写真提供/ジープラスメディア
翻訳/スヴェンソン・華子