Tokyo Embassy Talk:
ブラジル外交官が10年ぶりの東京で感じた「英語フレンドリー」

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 駐日ブラジル連邦共和国大使館のパトリシア・コルテス公館次席兼公使参事官は、過去にも同大使館に勤務経験があり、2022年に2度目の東京赴任で来日した。その10年の間に、都市が遂げた変化を感じている。
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パトリシア・コルテス公館次席兼公使参事官。東京都港区北青山の駐日ブラジル連邦共和国大使館にある、ハンナ・ルカテッリの壁画の前で。

-- 東京には、2回目の赴任だそうですね。

 私が東京で初めて暮らしたのは2008年から4年間、今働いている大使館でブラジル人コミュニティ部門を担当していた時のことです。今回は、2022年8月初旬に東京に来ました。

 駐日ブラジル連邦共和国大使館は、私たちブラジル人にとって非常に重要な存在です。ブラジルには世界最大の日系人コミュニティがあり、日本には約21万人のブラジル人が暮らしているからです(そのうち東京在住者は約4,000人)。両国間の人の結びつきは非常に強固です。だからこそ大使館の仕事は重要で、私が戻ってきた理由でもあります。人生にはいつだって何か成し遂げる余地があり、向上できるチャンスがあります。私は恵まれていて、日本での仕事も充実していると感じています。それが私にとって非常に重要なことなのです。ここでのこの先数年間にわたる任務期間をとても楽しみにしています。

-- 東京の第一印象はどのようなものでしたか?

 初めて東京を訪れたのは2004年で、当時のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領の公式訪問に同行しました。この街の最初の印象は、成田空港から大統領の滞在先である帝国ホテルへ向かう車の窓から見たもので、魅了されました。「いつかここに戻って暮らしてみたい」と心の中で思いました。その願いが2度も実現したのです。

-- 2008年に東京で暮らし始めて、どう感じましたか?

 荷物が届くまでの3カ月間は、大使館の向かいにあるサービスアパートメントに滞在しました。東京は西洋の都市とはまったく違いました。自分は旅慣れた人間だと思っていましたが、「木星か火星に降り立ったみたい!」と、衝撃を受けました。それが東京の第一印象ですね。

 到着した日の夜、食事をしようと出かけたのですが、漢字はもちろん、カタカナやひらがなも読めなかったので店を探すのに苦労するなど、すべてが困難に感じられました。結果的にピザ店を見つけられたのは、看板にピザの絵が描かれていたからです。ホテルに戻ってテレビをつけると、何ひとつ理解できませんでした。

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背後の絵画は、日系ブラジル人アーティスト、大岩オスカールの作品。

-- 10年前と比べて東京は変化していましたか?

 2022年に再び東京に来てから1カ月が過ぎた頃、10年前によく行っていたレストランを訪れてみることにしました。パンデミックで閉店した店もあるのではないかと気になりましたが、幸いお気に入りの店は営業していて、10年前に私が食べたメニューが今もありました。大使館から近いブラジル式バーベキュー専門店バルバッコア 青山本店には、10年前と同じくブラジル南部出身のウェイターが働いています。

 東京が顕著に変わったと感じるのは、より「英語フレンドリー」な都市になっていることです。クリスマスの時期に、アメリカから家族が訪ねてきた時も、私の手助けなしで外出し、目的地に辿りつくことができました。英語が話せる警察官も増えていますね。10年前は、この地域を管轄する赤坂警察署と大使館で会議をする時は常に通訳が必要でしたが、現在では多くの警察官は優れた英語力があって、かなりコミュニケーションしやすくなりました。

 東京は非常に活気に満ちた、常に変化し続ける都市で、建物の建て替えもしょっちゅう行われます。でも、新しくオープンしたレストランを除けば、そう多くの変化があったとは思いません。10年経った今も、この街の本質は変わっていません。

 私は東京が大好きで、完璧に近い街だと思います。

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ジャパン・ハウス サンパウロ。Photo: courtesy of Governo do Estado de São Paulo shared under CC Commons license.

<ブラジルの魅力>

Q1. 一度は訪れて欲しいブラジルの都市は?

 お勧めはサンパウロです。サンパウロは東京と非常に似ています。高層ビルが多く、人口は過密で、日本の影響を大きく受けています。世界最大の日本人コミュニティは主にサンパウロに集まっています。外務省による日本文化の海外発信拠点のジャパン・ハウス第1号はサンパウロにあって、隈研吾氏らにより2017年に建設されたのですよ。

Q2. おすすめのブラジル料理は?

 ブラジルの国民的なドリンクである、カイピリーニャです。カシャッサ(サトウキビを原料とする蒸留酒)と砂糖、フルーツを使って作る、とてもさわやかで強いショートドリンクです。キウイ、パッションフルーツ、パイナップル、レモン、ラズベリー、オレンジなど好みのフルーツを絞り、砂糖と一緒につぶして、カシャッサと氷を加えます。

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Photo: courtesy of 駐日ブラジル連邦共和国大使館

パトリシア・コルテス

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趣味は、都内の根津美術館ほかさまざまな美術館やギャラリーを自転車で巡ること。駐日ブラジル連邦共和国大使館に赴任中の2011年に起きた東日本大震災の際には、救援チームを仙台市に派遣し、石巻市、東松島市、南三陸町で自転車や消毒液を配布した。
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東日本大震災後の救援活動の様子。Photo: courtesy of 駐日ブラジル連邦共和国大使館
取材・文/土屋琳
写真(人物)/エリサ・ドリコット
翻訳/長沢光希