カタログギフトで防災に向き合うきっかけを

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 関東大震災から100年の節目にあたる2023年、東京都は「100年先も安心できる街づくり」を掲げて災害に強い街や仕組みづくりを強化している。ホームページでの15か国語による情報発信やイベントの開催など、情報の周知拡散にも注力。さまざまな防災施策が行われる中、2020年に都の防災ピッチイベントに参加した株式会社KOKUA(コクア)のビジネスが注目を集めている。
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株式会社KOKUAのCEOを務める泉勇作氏。

被災地で育ち、東日本大震災を見て災害救援を始める

 兵庫県神戸市に生まれた泉勇作氏は、1995年、2歳の時に阪神・淡路大震災で被災した。家族から被災時の話を聞きながら育ち、物心ついた時から防災に関心があったという。転機となったのは、2011年の大学進学直前に発生した東日本大震災だった。

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大学入学後は約3,000名の学生が所属するNPO法人国際ボランティア学生協会の活動に参加した。Photo: courtesy of 泉勇作

 大学在学中は、全国各地で救援活動に参加。卒業後もボランティア活動を続け、2018年には西日本豪雨災害で救援活動を行った。被災経験のある平成生まれのメンバーとともに「KOKUA」を立ち上げ、2020年に法人化した。ハワイ語で"協力しあう"を意味する「KOKUA」には、個人や企業が利害関係を超えて災害に立ち向かっていきたいという願いが込められているという。

大切な人に防災用品を贈る「LIFEGIFT」

 株式会社KOKUAの主力商品「LIFEGIFT(ライフギフト)」は、「あなたの無事がいちばん大事」をコンセプトにした日本初の防災用品のカタログギフトだ。カタログには、実用性が高く、インテリアとしても使えるお洒落な防災アイテムが16種掲載されている。

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お洒落で高級感のあるカタログには、防災用品の紹介カードが封入されている。

 「防災用品は、災害が発生しない限りコストに感じる人も多いと思います。もっと身近に防災を感じてもらうため、相手を思う気持ちをストレートに表現したギフトを発案しました」。この泉氏の着眼点から、これまでになかった新たなビジネスが生まれた。ライフシーンのお祝い事や企業の福利厚生など、「LIFEGIFT」の利用用途は幅広い。

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避難所生活で利用できるテントや、雨水や川の水を飲み水に浄水するボトル。Photo: courtesy of KOKUA

 株式会社KOKUAは、防災をより身近にするためにさまざまな商品開発に取り組んでいる。保存期間の長いレトルト食品や缶詰などの備蓄食を集めたカタログ「LIFEGIFT Food」や、自分に必要な防災対策がみつかるWEBサービス「pasobo」がその一例だ。

想像力を働かせて、個人で備える

 「日本では、多くの災害経験を教訓として、さまざまな対策が取られています。なかでも東京の復旧体制は、世界的に見ても充実している。その中で個人ができることは、想像力を働かせることです。自宅や外出先で、もし災害に遭ったらどうするかを具体的にイメージすることで、必要なモノがわかり、いざという時に最適な動き方ができると思います」

 官民がさまざまな方法で防災に取り組んでいる東京都。自分や身近な人を守るためには、こうした情報や知識を集めながら、一人ひとりが備えていくことが重要だ。

泉勇作

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1992年生まれ。大学の入学式直前に発生した東日本大震災をきっかけに、NPOで災害ボランティアを始める。2019年に一般社団法人防災ガールのアクセラレータープログラムに参画し、防災事業を立ち上げる。2020年9月に株式会社KOKUA創業。事業企画や全体の意思決定を担う。

パーソナル防災サービス pasobo

https://pasobo.jp

東京都防災ホームページ(15か国語)

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/
取材・文/安藤菜穂子
写真/榊水麗