Next Generation Talent:
異文化を理解し新たな価値観を創造する青山学院大学
ガイリンさんは幼少期に日本の文化と言語に魅了され、将来は日本で勉強することを目標にしていた。マレーシア国籍を持ち、両親の仕事の都合で幼少期を中国の上海で過ごした彼女は、異文化に対して関心を持つようになった。また、日本のアニメを見て育ち、そのなかでもいちばんのお気に入りだった、冨樫義博氏原作の冒険アニメシリーズ『HUNTER×HUNTER』の影響は大きかったという。「日本語を初めて耳にしたとき、その美しい響きに魅了されました。アニメソングを覚えて歌い、歌詞をすべて覚えるまでは、独学でひらがなを書いていました」
上海の高校に通っていたガイリンさんは、札幌にある姉妹校に留学できるチャンスを得た。札幌での1年半の高校生活を経て、2020年に青山学院大学の総合文化政策学部に入学することになる。入学前にキャンパスを見学した際には、クリエイティブで最先端の情報にいつも触れられる都心で学べることに心を躍らせたという。
「総合文化政策学部のカリキュラム紹介を見たとき、英語に重点を置いているだけでなく、日本の伝統文化やポップカルチャーも学べることがわかりました。さまざまな分野に触れ、自分の興味を見つけたいと思っている私のような人にとっては魅力的な学部です」
ガイリンさんは、2022年度の学業成績優秀者表彰で最優秀賞を受賞した。
異文化の中で成長する
ガイリンさんは総合文化政策学部で、言葉というものを思う存分探求できたと語る。日本語で短編小説を書き、短歌の発展についても研究した。「私の所属するゼミでは民話から日本の社会構造を見出し、それについて発表したり議論したりしました。"正解"だけを求めるのではなく、自分の意見を持ちつつも他の人の考えを吸収し、協力してよりよい解決策を見つけることの大切さを学びました」
グローバル化が急速に進む昨今、ガイリンさんは、お互いに尊重し合いながら異文化を知ることの価値を理解している。「たとえば私の場合、マレーシアと中国というバックグラウンドがあることを誇りに思っているので、他の人にもそれぞれの文化を知ってほしいのです。同時に、日本の文化も尊重し、学ぶべきだと思っています。つまり、"一方的"ではなく、"相互的"に文化を知ることが重要だと思います。大学ではプレゼンテーションや論文を通して日本語の能力を養いました。また、文化そのものを考える力や、文化に起因する社会問題について考える力もしっかりと身に付きました」
積極的にチャンスを狙う
多様な文化が入り混じる青山学院大学では、学んだ知識を教室の外でも活かすことができる。ガイリンさんは同級生に誘われて、アートと社会問題を結びつける学外活動に参加しているが、それが彼女にとって自分自身を振り返る機会になっているという。「私にとってこの活動は貴重な経験になっています。ジェンダーや国籍といった社会問題とアートとのつながりや、日本社会における個のあり方について考え続けたいです」
ガイリンさんの洞察は日常の問題にまで及ぶ。家賃や生活費が相対的に高い東京は、外国から留学に来る人にとってハードルになり得ると指摘する。その負担を軽減する方法の一つとして、奨学金の利用を提案してくれた。彼女が利用したのは、日本の大学で学ぶ東南アジアからの私費留学生を対象にした公益財団法人による制度だ。
言葉が持つ力
2024年4月に卒業を控えたガイリンさんは、すでに東京にあるインバウンドメディア業界に就職が決まっている。言語と文化の両方が好きな人にとっては理想的な業界だ。「特にインターネットでの情報があふれるこの時代に、私の声は小さいかもしれませんが、日本について知ってもらう機会を提供していきたいです。それと同時に、異文化や知らない分野についても掘り下げて考えることを促していきたいです」
言葉の持つ重みを痛感しているガイリンさんは、自分の言葉をインターネットで気軽に発信できることは、特権でもあるけれど大きな責任を伴うことでもあると感じている。丁寧な言葉を遣い、共感力をもつガイリンさんならば、これから社会に出て、自らの声を通じて社会に前向きな変化をもたらしてくれるだろう。
テイ・ガイリン
総合文化政策学部
社会科学、芸術、文化、政策学などの学問領域を融合させ、文化を革新する21世紀の人財を育成する。グローバルな視野で将来のキャリア形成を促すユニークな経験を提供。大学の近隣エリアに拠点を置くクリエーターや企業と学生をつなぐ研究教育組織の青山コミュニティ・ラボ(ACL)を拠点に、クリエイティブな共同プロジェクトなども行っている。www.aoyama.ac.jp/faculty/sccs
青山学院大学
www.aoyama.ac.jp写真/椎木・フーリオ・浩司
翻訳/スヴェンソン・華子