企業が取り組む自然保護:
ICTが森の守り方を変える
森林整備に役立つスマート林業
NTTドコモは、1999年から自然環境保護活動の一環として、全国でドコモの森づくりを推進し、森林整備活動を継続的に実施してきた。同社が行うのは、本業である通信事業の強みを生かした取組だ。NTTドコモ社会貢献推進担当課長の山本梨容子氏に話を聞いた。
「私たちはドローンを使った測量や自動運転型下刈機械など、ICTを生かしたスマート林業の実践を支援しています。植栽した苗木の成長を妨げる雑草や雑木を刈り払う下草刈りや間伐といった適切な手入れを行わないといけない人工林では、ICTによる省人化、省力化が期待できます。それが森を守ることにつながっています。こうした技術を活かした森林の保全活動にも力を注いできました」

森の食物連鎖をドローンで観察
環境教育にも力を注ぐ。ドコモ八王子上川の里の森で開催した小学生対象のイベントでは、スマート林業で使用するドローンを使い、ワシやタカが餌となる小動物などを見つけて捕獲する視野や視点をタブレット上に再現。迫力のある映像に、子どもたちは息をのんだという。
「森では、足もとの土を掘ったらミミズが出てきます。ミミズを餌にするのはヘビなどの爬虫類です。ヘビはワシやタカに食べられます。生態系の食物連鎖について授業などでも学ぶ機会はあると思いますが、現地ではよりリアルに学ぶことができます。自然はこうしたつながりのなかで成り立っていると理解すれば、環境を守る大切さもおのずとわかってくるのではないでしょうか」

沖縄では水中ドローンを使ってサンゴの生態を観察した。地域の特色を生かした学びは、環境への向き合い方を考えるきっかけになっている。
「イベント後に実施するアンケートでは、いつもたくさんの声が寄せられています。『子どもの目の色が変わりました』と書いてくれた保護者もいます」と山本氏。これが「学ぶ森」だ。

生物多様性保全ゲームを期間限定リリース
さらに2024年4月には、ドコモの森を活用した生物多様性保全ゲーム「もりまもり」を期間限定で提供。スマートフォンの画面をタップして森や湿地を整備し、希少生物のマツタケやサンショウウオを守るゲームで、それぞれの生物に適した環境を整備・維持することでNFTを獲得できる。NFTの総数に応じた植林をドコモの森で実施するというものだ。これが「遊ぶ森」だ。
ゲームの提供は同年9月に終了。「現地に足を運ぶことだけが環境活動ではなく、私たちの得意分野であるお客様接点や技術を生かして、生物多様性の保全について考えるきっかけを提供できました」
11月にはゲーム利用者を対象に、隣県である千葉県のドコモ君津の森での植林作業を実施。遠く九州から足を運んだ参加者は、「このゲームを作ったのはどんな人たちか興味を持ちました」と話したという。ゲームをきっかけに興味の輪は静かに広がっていた。

NTTドコモがこうした環境保全活動に取り組む意義について山本氏はこう語る。
「企業も私たちの生活と同様に、自然資本の上に成り立っていますから、それを守っていくことは責務だと考えています。これからもNTTドコモの技術を使った課題解決への取組を継続し、私たちのサービスの利用者や地域住民の方たちと一緒に活動できる場面も積極的に創出していきたいと思っています」
山本梨容子
NTTドコモ 生物多様性・生態系の保全
https://www.docomo.ne.jp/corporate/csr/ecology/protection/?icid=CRP_CORP_csr_activity_kanto_forest_to_CRP_CORP_csr_ecology_protection#p01東京都は、100年先を見据えた"みどりと生きるまちづくり"をコンセプトに、東京の緑を「まもる」「育てる」「活かす」取組を進めています。
企業など様々な主体との協働により、「自然と調和した持続可能な都市」への進化を目指しています。
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/tokyo-greenbiz-advisoryboard
写真/藤島亮