5回目のワールドカップ出場を目指すサッカー日本代表・長友佑都が語る東京の魅力

 イタリア、トルコ、フランスの強豪クラブでプレーし、2021年に11年ぶりとなるFC東京への復帰を果たした長友佑都選手。自身5回目の出場を目指すワールドカップを来年に控えた日本サッカー界のレジェンドが、FC東京というクラブ、そして東京という街の魅力について熱く語る。
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復帰の決め手について「愛するクラブだから。それ以外にない」と語るほど、FC東京への愛が強い長友佑都選手

―2021年に海外から「愛するクラブ」であるFC東京へ11年ぶりに戻ってきた長友選手にとって、FC東京の魅力はどのようなところにあるのでしょうか?

 まず日本の首都・東京にあるクラブだということは、圧倒的な魅力だと思います。首都は人がたくさん集まるところであり、外国からも多くの人が来ることで、経済的にも大きなエリアですし、海外でも首都のクラブはビッグクラブが多かったですね。また、FC東京には10年以上前から働いている方もたくさんいます。スタッフの人たちに愛がある非常にアットホームなクラブで、本当に家族の元に帰ってきたなという感覚がありました。

―イタリア、トルコ、フランスと海外の3か国でプレーされた経験を踏まえて、FC東京のホーム・味の素スタジアムで試合をすることの魅力を教えてください。

 僕がプレーしていたインテル(イタリア)、ガラタサライ(トルコ)、マルセイユ(フランス)というクラブは、熱気という部分で圧倒的にすごかったのですが、中には度を超える厳しさもありました。その意味では、FC東京のファン・サポーターは愛がありますし、優しいですね。味の素スタジアムには、家族を安心して連れてくることができます。海外ではサポーターが熱狂的である分、チームがネガティブな状況になると物が飛んでくることもありますし、本当に命の危険を感じることもあったので、そういう面でも日本は安全だと感じています。

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ストイックさで知られる長友選手は、この日もしっかりトレーニングを行ってから取材に応じてくれた

―インテル時代のチームメイトが来日された際には、東京で一緒に食事もされていたようですが、海外のご友人たちは東京にどのようなイメージを持たれているでしょうか?

 かなりポジティブなイメージを持っていると思います。人のマナーの良さにはみんな感動していますし、また東京に来たいという友人は多いですよ。マルコ・マテラッツィは何度も来ていますし、アントニオ・カッサーノもまた来たいと言っていたので、喜んでもらえるのはうれしいですよね。彼らにはふざけて「俺は東京のボスだから、東京のことは何でも聞け」と言っています(笑)。僕は大学から東京に出てきたのですが、もう生活している時間も長いので、東京で知らないことはないというプライドは持っていますし、10年ほど海外に行っていて、また帰ってくることができたので、東京に対する愛着はありますね。

―東京という地域とスポーツ、サッカーの関わりについて、海外と比較して違いを感じられる部分はありますか?

 ミラノもイスタンブールもマルセイユも、ダービーの試合の前には街の空気が変わるぐらい、熱狂的な雰囲気がありました。東京にはサッカー以外にも娯楽がたくさんありますし、まだサッカー文化は海外ほど根付いていないなというのが正直な感想です。

―そこに対して、知名度の高い長友選手だからこそ発信できることも考えていますか?

 いろいろと意識はしていますが、僕の力だけではまだまだ小さいので、もっとたくさんのサッカー選手たちが注目されるために、キャラクターも含めて各々が強烈なものを持っている必要がありますし、そこは一人ひとり考えないといけない部分があるはずです。僕は自分のキャラクターが普通だと、これが世界のスタンダードだと思っているのですが、周囲の人にしてみれば強烈なのでしょうか。みんながこうなれば、たぶんあらゆることの温度が上がると思いますし(笑)、もっと面白いことになるんじゃないかなとは考えています。

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日本代表としての出場試合数は歴代2位を誇る(2025年8月現在)

―これからFC東京がより強いクラブになるために、長友選手はどういった役割を担っていきたいでしょうか?

 FC東京は首都・東京のクラブとして常にタイトルを争う存在になるべきですし、個人的には東京だけではなくて、Jリーグのシンボルになるようなチームにしていきたいです。その中で自分は選手として、ちゃんとピッチで活躍する姿を見せて、チームの勝利に貢献することにフォーカスしたいと思います。

―来年には長友選手にとって5回目のワールドカップが控えていますが、そこに対する思いはいかがでしょうか?

 その質問はよく聞かれるのですが、僕の語彙力ではなかなかこの思いを伝えられる言葉がなくて、いつも困っています。一方で、初めて経験した2010年のワールドカップと、前回のワールドカップカタール大会にはFC東京の選手として出場したので、もし今回出られるとしたら、FC東京の選手としての出場は3回目になります。そこには自分自身も誇りとプライドを持っているので、このクラブを背負ってワールドカップに出ることで、またFC東京に恩返しできるのではないかと思っています。

―改めて世界に向けて「東京はこういう街ですよ」と発信するのであれば、長友選手はどういう言葉で紹介されますか?

 「東京はきれいな街だよ」ですかね。人の心も、おもてなしの気持ちも、街自体もそうですし、「きれいだよ」と伝えたいです。

東京に愛着を持ち、文化や人々のマナーの良さなどに魅力を感じていると語る長友選手 Movie: 東京都

長友佑都

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1986年9月12日生まれ、愛媛県出身。豊富な運動量と抜群のスピードを兼ね備えたサイドバック。高い俊敏性を持ち世界でも競り負けないフィジカルと身体能力の高さを併せ持つ。Photo: courtesy of FC東京
取材・文/土屋雅史
写真/井上勝也