環境に配慮したパッケージを、「未来のあたりまえ」にする
捨てられる前提のパッケージを変えていく。GREEN PACKAGINGの取組
食品や飲料、日用品など、私たちの身近な生活を支えるさまざまなパッケージ。しかしそのライフサイクルは短く、中身を使い終えたら捨てられてしまうもの。
「製造事業者の責任として、環境負荷を低減したパッケージを提供していきたいという思いがありました」と、茂木氏はその背景を語った。
減プラスチック・脱プラスチックの意識が高まる以前から、同社では環境負荷の低減を目指したパッケージ製品の開発に取り組んできた。1997年、環境負荷をライフサイクル全体で評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)を取り入れ、そこから環境負荷の低いパッケージ開発が本格的にスタートした。代表となるプロダクトが、2018年にブランド化したDNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING®。3R+Renewable(再生可能資源活用)を基本に、「CO2の削減」「資源の循環」「自然環境の保全」の三つの価値を社会に提供することを目指している。
パッケージには中身を守るために、保存性、耐熱性、強度などさまざまな機能が求められる。一方、それらの機能を実現するために異なる素材を組み合わせると、リサイクルしにくくなるという課題があった。そこで、単一素材(モノマテリアル)でありながら、必要な機能を保つパッケージが「DNPモノマテリアル包材」である。長期保存が必要な食品や乾燥物、コスメ・ヘルスケア商品など、さまざまな用途に対応している。
「弊社の強みであるコンバーティング技術や蒸着技術を組み合わせて、モノマテリアルでも機能性をクリアした素材の開発が実現しました」と岩渕氏は語る。
そしてもう一つの主力製品が、石油由来原料の一部をサトウキビ由来原料に置き換えた「DNP植物由来包材 バイオマテック®」。両製品とも、お菓子・洗剤のパッケージなど日常的な商品に幅広く採用され、医薬品包材への展開も進む。
規制の厳格化を新たなチャンスに変える
2026年より段階的に適用がスタートするEUのPPWR(Packaging and Packaging Waste Regulation:包装・包装廃棄物規則)をはじめ、世界各国でパッケージに関する環境規制の厳格化が進んでいる。「こうした変化を新たな価値創出の機会と捉え、国内外の動向を先取りしながら、お客様とともに課題やリスクを整理し対応策を検討していきたい」と、岩渕氏は話す。
規制強化の背景には、根拠のない環境訴求への目の厳しさが増していることもある。何をもって「環境に配慮している」といえるのか。企業としての意思や姿勢にとどまらず、「明確な基準とエビデンスをもって証明していきたい」と茂木氏。EUの「グリーンクレーム指令」の検討を契機に、関連する法整備が進み、客観的データのない環境訴求を規制する動きが強まっている。日本でも、環境省が2026年3月に「環境表示ガイドライン」を13年ぶりに改定した。事業者の自己宣言による環境表示において、ライフサイクル全体を考慮すること、曖昧な表現や主張を避けることなど、グリーンウォッシュを防ぐための基準が具体化されている。
見えないCO2を、数字で見える化
GREEN PACKAGINGの開発・提供とともに、同社が取り組んでいるのがCO2排出量の可視化だ。原材料の調達から自社のパッケージ製造・輸送・廃棄まで、ライフサイクル全体で排出されるCO2を定量化している。
「製造事業者の責任としてCO2削減に取り組むとともに、排出量を定量化し、それらが削減できるパッケージを提案することで、ブランドオーナー様のScope3*削減にも貢献する必要があると考えています」と岩渕氏。
この取組は2026年に新たな広がりを見せている。同社はプラスチック製の容器包装に関わる企業・団体とともに、環境省の「製品・サービスのカーボンフットプリント(CFP)に係るモデル事業」に参画。プラスチック製の容器包装を対象としたCFP算定ルールと解説書を2026年3月に策定・発表し、算定手法に関する共通的な考え方の整理や、サプライチェーン全体で活用できる基盤づくりを進めている。
* Scope1は自社で使用する燃料等の燃焼による直接排出、Scope2は購入した電気・熱等の使用に伴う間接排出、Scope3はサプライチェーン全体で発生する間接排出量
環境配慮と事業性の両立が評価され、東京金融賞2020を受賞
2020年、GREEN PACKAGINGは東京都主催の「東京金融賞2020」ESG投資部門(SDGsカテゴリ)を受賞した。同賞は、東京都が2017年に策定した「国際金融都市・東京」構想の一環として、ESG投資の普及を実践する企業を表彰するもので、現在は「サステナビリティ部門」とされている。
「企業として、環境への思いと事業との両立の姿勢を、客観的かつ中長期的な視点で評価いただいたことは、大変意義深いことでした。『これからもパッケージの力で社会課題を解決していく』という決意が確信に変わりました」と茂木氏は振り返る。
環境配慮パッケージが「あたりまえ」になる未来へ
環境やリサイクルに関する制度や人々の意識が時代とともに変わる中、常に事業活動と地球環境の共生を考え、サプライチェーン全体で環境を強く意識した活動を推進してきた大日本印刷。同社が描く、理想の未来について伺った。
「日本の強みである緻密なものづくりと、グローバルの環境基準を融合させることで、Lifeデザイン事業部のビジョンである『世界中のLifeに幸せと感動を』届けていきたいです」と岩渕氏。
「消費者が意識して選ばなくても、手に取るすべてのパッケージが資源循環と脱炭素の設計になっている世界が理想です。機能性もコストも妥協しない『見えない環境価値』を支えるインフラになることが、目指す『未来のあたりまえ』です」と茂木氏は語る。
150年にわたり培われてきたものづくりの精神は、「未来のあたりまえをつくる。」というビジョンの下、パッケージという身近な存在を通して、世界の「あたりまえ」を着実に変えていく。
岩渕美香(左) 茂木沙緒梨(右)
大日本印刷株式会社
https://www.dnp.co.jp/index.html写真/及川誠
