「ビジネスのポテンシャルが高い。だから世界は東京に注目している」データサイエンティスト ジェリー・チー|TOKYO Dream Vol. 1
日本に魅了されたきっかけは、「文化」
東京は、日本における経済の中心であり、世界最先端の鉄道網を有する都市だ。そのビジネスポテンシャル、利便性は高く、在留外国人数が多く住むまちとなっているのは必然と言えるだろう。
日本全体の在留外国人の数は288万5904人(2020年6月末)。うち、56万8665人が東京在住であり、全体のおよそ20%にあたる。世界の中から東京を選ぶ理由は人さまざまだが、台湾系アメリカ人のジェリー・チーさんの入口は「文化」だった。
「マンガ・アニメ・J-POPがきっかけで、日本に興味を持ち、米スタンフォード大学在学中に、日本留学を経験しました。北海道の函館で日本語を学びながら、日本のさまざまな面に触れました。街を歩けば、寺や神社があり、夏になれば祭りがある。文化や伝統、そして優しい人々に囲まれる日々は刺激的で、楽しかった思い出しかありません」
こうして日本に魅了されたジェリーさんは、帰国後も日本語の勉強を継続。在学中に、日本語能力試験1級を取得し、大学卒業後はイギリス系の投資銀行「バークレイズキャピタル証券」の東京支社に就職した。クレジットデリバティブトレーダー・アナリストとして、企業の財務分析はもちろん、グローバルで展開される取引やコミュニケーションの効率化にも取り組んだ。
「その後、証券取引の会社を起業しました。そのなかで経営についてより深く学びたいと考え、2010年に一度アメリカに戻り、ペンシルバニア大学でMBAを取得しました」
東京は、キャリア形成しやすい都市
データサイエンスと経営。2つのスペシャリストとなろうとしていたジェリーさんは、2012年より日本のGoogleでシニアファイナンシャルアナリストとして、ビッグデータの加工・分析業務に従事。その後、モバイルゲームの開発会社「スーパーセル」に転職。本社ヘルシンキに異動し、ゲームのデータ分析業務に携わっていた時期を除けば、キャリア形成の中心は現在も含め「東京」だ。その理由を訊ねてみると、「暮らしやすさ」と「ビジネスポテンシャル」の2点をジェリーさんは挙げた。
「東京は移動も便利ですし、ご飯もおいしい。コンビニで買うパンやおにぎりまでおいしくて、そのレベルの高さは、外国人なら誰もが驚くと思います。それに安全ですし、暮らしやすい。仕事面でも、日本は自分にスキルさえあれば、能力を発揮できる環境に身を置くことができますし、キャリア形成しやすい場所だと感じています」
ジェリーさんの感覚としては、ニューヨークよりも東京にいた方が、自分が特別な人材として目立ち、キャリア形成がしやすいそうだ。また、香港は金融系の企業ばかりだが、比べて東京は多種多様な企業が拠点を構えているため、「選択肢も多いし、多様な人とも出会える」と語る。
「加えて、データサイエンティストとして日本企業を見たときには、データ分析・活用によって、ビジネスが拡張するポテンシャルを持っている企業が多いのも魅力的です。自分の仕事が大きなインパクトにつながる。これは楽しいですよ」
世界が注目する、東京のビジネスポテンシャル
現在は、世界No.1の求人検索エンジン「Indeed」で、データサイエンティストとして勤務。外資系企業の視点から捉えたとき、東京はどのように見えているのだろうか。
「Indeedも含め、GoogleやAppleなどのグローバル企業は、東京に大きなオフィスを持ち、多くの人を採用しています。なぜなら、それだけ日本には大きなポテンシャルがあり、重要な市場だと考えているからです。外資系企業の視点、海外から見ても、東京への期待値、注目度は非常に高いと言えるでしょう」
東京で働き、東京で暮らす。その日々を「エキサイティング」だとジェリーさんは表現する。今後も東京でキャリアを重ねていく考えで、夢は「AIを活用したイノベーションを起こす」ことだそうだ。
「近年、AIの発展によって、画像や音楽を自動生成するクリエイティブAIの進展が目覚ましい傾向にあります。アニメやゲームなどの分野は、クリエイティブAIによって大きな進化を遂げる可能性があると私は感じています。そこにゆくゆくは関わっていくことで、東京発のイノベーション、社会に大きなインパクトを起こせたらうれしいですね」