英名門eスポーツチームのFNATICが、東京に拠点を置く理由とは?

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 2004年にイギリスで設立された老舗eスポーツチーム、FNATIC。30のゲームタイトルで200回を超える優勝実績を誇り、2019年にビジネスと競技の両方で日本への進出を果たした同チームのキーパーソン3人に、東京のeスポーツの現在地について訊いた。
英名門eスポーツチームのFNATICが、東京に拠点を置く理由とは?

 コロナ禍のなかでも伸び続けているeスポーツ市場。ゲームを通じてプレイヤーたちが磨き上げた技術を競い合い、観客たちがそれを手に汗握りながら見守るこの競技は、この数年で大きくその存在感を増してきた。その観客数はオンラインを含めれば2021年に世界で4.74億人にもなると 試算されており 、日本国内のeスポーツ市場規模も2024年には 180億円規模になるとされる 。東京都も2年連続で「東京eスポーツフェスタ」を開催するなど、そのポテンシャルに注目してきた。

 FNATICは、そんなeスポーツ業界の黎明期からプロシーンを盛り上げ、多くのゲームタイトルで輝かしい功績を残してきたプロeスポーツチームだ。競技そのものの実績もさることながら、世界的なファッションブランドやプロサッカーチームとのコラボレーション、在籍プロ選手がプロデュースするゲーミングギアの販売などビジネスも多角的に展開し、eスポーツ企業としての可能性を切り開いてきた。

FNATIC

 ロンドンを拠点とするプロeスポーツチーム。2004年の設立以来、30以上のゲームタイトルで200回を超える優勝実績を誇る。現在は、「League of Legends(LoL)」「Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO)」「DOTA 2」「レインボーシックス シージ(R6)」「VALORANT」など8つのゲームタイトルで40人のプロeスポーツ選手を擁する。

 2019年には東京オフィスも設けており、近々首都圏に選手の練習拠点となるチームハウスも新設する予定だという。現在世界6拠点に100名のスタッフを擁する同チームにとって、東京の魅力はどこにあるのだろう? 同社東京オフィスで顧問を務めるダニエル・ツァオ、日本での競技経験も豊富な「レインボーシックス シージ(R6)」部門のチームディレクターでヘッドコーチのジェイデン・"Dizzle"・サンダース、そして同チームのキャプテンであるエティーヌ・"Mag"・ルソー選手(通称まぐ)に話を聞いた。

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インタビューに答えてくれたFNATICレインボーシックス シージ(R6)部門のヘッドコーチ、
ジェイデン・"Dizzle"・サンダース氏(上)と、同チームのキャプテンであるMag選手(下)。


--eスポーツシーンは世界中で盛り上がっていますが、FNATICがそのなかでも東京をチームやビジネスの拠点のひとつに選んだ理由はなんでしょう?

ダニエル・ツァオ:日本ではeスポーツの認知度がこの数年で急速に高まっており、市場も急成長してきました。ゲームに関する歴史も長く、世界中の若者の間で日本文化は広まっています。また、特に東京には世界有数のストリートカルチャーがあり、東京を拠点とする才能あるデザイナーやアーティストと一緒に商品を開発するには間違いなく理想的な場所です。

 加えて、世界各地へのアクセスがよい東京は、選手が海外に行って国際大会に参加するにも、EMEA諸国(ヨーロッパ、中東、アフリカ)を拠点とする他のチームを招いて練習試合やイベントを開催するにも、ファンが選手と交流したり日本の素晴らしい文化を体験するにもうってつけの場所と言えます。将来的には、東京がFNATICファンの国際的なハブになることを期待しています。

 今回のパンデミックの影響で、残念ながら選手たちはまだ東京に移れていませんが、その間も日本でのビジネスチャンスを発掘し、より良いコンテンツと高性能な製品をすべてのゲーマーにお届けしたいと考えています。


--レインボーシックス シージ(R6)部門の選手たちは、何度か来日して試合などにも出場していますよね。チームにとって東京の魅力はどこにありますか?

ジェイデン・サンダース:東京での体験が、FNATICの日本進出や投資拡大の決め手になりました。例えば2019年にチームが来日した際には、秋葉原で数時間待ちのファンミーティングを開催できましたし、ハローキティとのコラボレーショングッズの発売や「東京ゲームショウ2019」内でのエキシビジョンマッチなどにも出場しています。また、ビジネスパートナーや日本のeスポーツ関連団体、ファンのみなさんとも良い体験を共有してきました。

 チームも東京の食や文化、雰囲気を存分に楽しんでいましたし、今後さらに東京の魅力を発見できることを心待ちにしています。行政やビジネス、そしてeスポーツ団体からの適切なサポートがある東京には、eスポーツを通じて今の世代や次の世代の若者のために持続可能な文化とエンターテインメントを築く土壌があると考えています。

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「東京ゲームショウ2019」のエキシビジョンマッチにて。
(写真提供:一般社団法人日本eスポーツ連合)


--今後はビジネスとして、東京でどんな活動をされていく予定でしょうか?

ダニエル・ツァオ:eスポーツ業界はさまざまな業界が組み合わさって成り立っていますが、東京にはFNATICが今後コラボレーションしていきたい有力な企業が多く揃っています。FNATICはほかのeスポーツ関連企業と比べてもビジネスをかなり多角的に展開しており、そういう意味でもグローバルな強みを生かして日本企業ともパートナーシップを築いていきたいと考えています。さらに今後はFNATIC内のほかのチームとの相乗効果を生むことも期待して、日本の選手やゲーム関連のコンテンツクリエイターとの契約も視野に入れています。


--プレイヤーの立場から見て、Mag選手が東京の今後のeスポーツシーンに期待することはなんでしょうか?

Mag:eスポーツが東京を席巻するようになればと期待しています。いつの日か、日本がeスポーツを牽引する国のひとつとなり、東京がその道を切り開くハブとなってくれたら嬉しいです。日本にはその力があると思いますし、ファンベースやプレイヤーベース、才能も揃っているので。東京でも、eスポーツが野球などと同じように真剣な競技として受け止められるようになってほしいと思っていますし、eスポーツが文化やエンターテインメントのメインストリームになればと願っています。

東京eスポーツフェスタ

 スポーツの普及と関連産業の振興を目的に、東京都が2020年より主催しているイベント。東京都知事杯をかけた競技大会や、関連産業展示会、eスポーツのセミナー・学習企画などが開催されている。
取材・文/冨田秀継