ゼロエミッション東京:都市の行動こそが重要|TMCトーク Vol.5

 本記事は2021年8月4日に 東京都メディアセンター(TMC)が実施したTMCトークでの東京都知事、小池百合子氏の講演を書き起こしたものです。 英語で読む/Read in English

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ゼロエミッション東京 都市の行動こそが重要|TMCトーク Vol.3

 皆様、こんにちは、東京都知事の小池百合子です。今日は、1,400万人の人口を抱える東京都が世界の大都市の責務として、いかに気候危機に取り組むか、これをご説明していきたいと思います。

 まずこちら、東京2020大会のメダルですね。このメダルが何からできているか、ご存じでしょうか。

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 もちろん、金、銀、銅なのですが、単なる金、銀、銅ではありません。実は、2017年から約2年間かけて、使用済みの携帯電話や小型家電など、いわゆる「都市鉱山」から金属を取り出してきたんですね。これを活用して製作したのが、この東京2020大会で授与される約5,000個のメダルとなっています。海外の多くの方にもご協力いただきました。写真にも写っていますね、ボリス・ジョンソンさんからもいただきました。メダルには、アスリートの皆様への世界中の人々の応援の気持ちが詰まっています。

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 選手の方々が栄冠に輝く表彰台ですが、こちらの方もみんなで回収した使用済みプラスチックでできているんですね。普段は使い捨てているプラスチックが、まさに晴れの舞台に生まれ変わる。大会の表彰式を見るたびに、使い捨て文化が、いかに「もったいない」か。そのことを感じますね。関わった皆様が実感していることでしょう。

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 さて、東京都は、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする「ゼロエミッション東京」を宣言しています。特に、2030年までの10年間が重要と考えています。

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2030年までに都内の温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減いたします。この「カーボンハーフ」を実現するため、エネルギー消費量を50%削減、同時に、再生可能エネルギーの電力利用割合を50%に高めることを目指してまいります。東京2020大会でも、象徴的な取組を取り入れています。特に注目したいのが、水素の利用。日本全国を巡りました聖火は、オリンピック史上初めて、一部区間で水素を燃料としました。また、選手村内の施設の一部では、福島県産の再生可能エネルギーを用いて製造された水素が活用されているんですね。

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 次に、「建物のゼロエミッション化」についてお話いたします。都内のCO2排出量の約7割は建物に由来しております。東京都では、世界に先駆けまして、2010年から都市型キャップ&トレード制度を導入しております。オフィスビルなど既存の建物のうち、大規模事業所に総量として削減義務を課す画期的な取組なんですね。2019年度には、基準排出量比で27%もの大幅削減を達成しております。このノウハウは、2019年からニューヨーク市にも提供をいたしております。

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 東京都は、東京2020大会のホストシティとして、大会にかかりますCO2削減を進めております。「カーボン・オフセット」への協力も、その一環です。東京都は、キャップ&トレード制度の対象事業者に、カーボン・オフセットのためのCO2削減クレジットの提供を呼び掛けてまいりました。その結果、153事業者の皆様から、目標の365万トンを大きく上回る418万トンを御提供いただきました。346万トンを東京2020大会へ活用しまして、残りの72万トンを大会開閉会式4日間分の都内CO2排出量をゼロとする『東京ゼロカーボン4デイズin 2020』実現のために活用させていただきます。今後、東京都では、こうした市民や事業者との連携によるカーボン・オフセットの取組や再生資源の活用などを大会のレガシーとして、次の開催都市でありますパリ市へつないでいきたいと考えています。

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 運輸部門は、都内排出量全体の2割。その8割を自動車が占めているんですね。自転車や徒歩など、CO2を排出しない行動への移行を促進するとともに、車そのものを脱炭素化することが必要です。東京都は、自動車のゼロエミッション化を加速してまいります。まず、東京都の庁有車に二酸化炭素などの排出ガスを出さないゼロエミッション・ビークル、つまりZEVを導入しています。都営バスの燃料電池バス活用も積極的に進めています。また、東京2020大会のメディア関係者の皆さんの輸送の一部も、水素エネルギーを活用した燃料電池バスが担っています。

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 東京都は、都内で新車販売される乗用車は2030年までに、二輪車につきましては2035年までに100%非ガソリン化することを目標として掲げております。車両の導入においては、国と連携した補助を開始しています。これにより、電気自動車の購入、維持に係る総コストが、ガソリン車を下回る水準にまで軽減できることになります。インフラ整備もあわせ、ZEV社会の実現に向けて取り組んでまいります。

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 脱炭素に向けた膨大な需要を資金面で支えるグリーンファイナンスの活性化も進めます。東京都では2017年に日本の地方自治体初めての「グリーンボンド」を発行し、この資金を、ヒートアイランド現象に伴います道路の遮熱性・保水性の向上や、今回の大会の施設の環境対策などに活用しています。また、2019年には「東京版ESGファンド」を創設するなど、民間と連携いたしまして、我が国のグリーンファイナンスをけん引してまいりました。そして今般、戦略的な取組として、「Tokyo Green Finance Initiative」略してTGFIを発表しました。これによって、東京の「都市システム」と「金融システム」のグリーン化を同時並行的に進め、人々の生活向上と経済の持続的発展を実現してまいります。

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 ここまで、東京都の気候危機への対処を、東京2020大会での取組を交えまして、ご紹介してまいりました。東京都はコロナ禍からの復興に際し、ただ元に戻るのではなく、気候変動に対応しながら持続可能な回復を成し遂げてまいります。この「サステナブル・リカバリー」を世界と共に歩む出発点といたしまして、オリンピック閉会式の前日であります8月7日に、東京都主催の国際会議「Sustainable Recovery Tokyo Forum」、略称としまして「Re StaRT」、こちらを開催いたします。次期開催都市であるイダルゴ・パリ市長、2028年開催都市でありますガルセッティ・ロサンゼルス市長の出席なども予定しております。世界中からご覧いただけるよう、会議の方はライブ配信をいたしますので、こちらのQRコードから、配信ページにアクセス、どうぞよろしくお願いします。

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 今年は、東京2020大会開催終了後の11月に、イギリス・グラスゴーでCOP26が開催の予定となっていますね。気候危機を前にして、私たちに残された猶予はありません。今こそ、行動する時。「Time To Act」を合言葉にして、世界全体のゼロエミッションに向けて、共に行動してまいりましょう。

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 ご清聴、まことにありがとうございました。

記事中の文言は、実際の発言内容と必ずしも一致するものではございません。