モードな「ZORI」の魅力を、インフルエンサーが発信。
目の覚めるような鮮やかなカラーリング、巻(側面)に施されたモダンなストライプ模様、天板が滑らかな曲線を描くハイヒール。草履のイメージを覆す、モードな「ZORI」を生み出したのが、昭和10年(1935年)創業の四谷三栄だ。
上質なものづくりが長く支持され、初代の時代は芸者衆に、2代目の時代は茶道や日本舞踊の師匠に愛されてきた。3代目となる当代の伊藤実氏は、伝統を受け継ぎつつ、従来の概念に囚われないファッションとしての草履に挑戦。それが「ZORI貞奴」である。明治期の芸妓で日本初の女優でもある、川上貞奴からインスパイアされたネーミングだ。
「洋装にも合い、海外の方にも履いていただけるようなものを目指しました。デザインにこだわりつつ、初代の頃から大事にしている"履きやすさ"は崩さない。世界に向けてZORI文化を発信していけたらと思っています」
こう語る伊藤氏は、まず1年目はサンプルを元にヨーロッパ市場で調査した。海外ではかかとを出して履く習慣がないことから、天板をジャストサイズに修正し、2年目はさらなる試作とテストマーケティング。ハイブランドからの高評価を得て、3年目となる今年は著名人のSNS発信によるプロモーションを展開している。女優の夏木マリ氏とのコラボレーションでは、オーダーメイドでつくり上げた深紅と緑×黒の2タイプが、夏木氏のSNSで発信されて話題を呼んだ。
「とても気に入っていただき、結婚記念のお祝い用の純白の着物に合わせた、真っ白な貞奴もオーダーしていただきました。SNSを見て、同じものを注文されたお客様もいらっしゃいます」
海外のインフルエンサーとの協働では、モード雑誌のようなコーディネートの写真が反響を呼んでいる。種が芽吹き始めた今、ZORI文化を花開かせるべく、時間をかけて育てていきたいと伊藤氏はいう。
「いずれは、海外の店舗でも展開できるようになれば本望です。実際に履いてみることで、日本の履物に興味をもってくださる方が少しずつ増えていったらうれしいですね」