"注染"の魅力が際立つ、季節感豊かな手拭い。

出典元:「江戸東京きらりプロジェクト」
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 春の桜、夏の金魚、秋の紅葉、冬の雪輪......。日本人は古来、四季や自然を題材にしてさまざまな文様を生み出してきた。「注染(ちゅうせん)」という日本独自の型染め技法を使った、美しい文様の浴衣や手拭いを中心に取り揃えるのが丸久商店。明治時代の創業以来、卸問屋を商いとしてきたが、近年では多彩な企画やイベントなどで注染の魅力を積極的に発信している。

 そのひとつが、所有している膨大な型紙のストックを使い、手拭いとして蘇らせた「復刻てぬぐい」。とりわけ、職人の技量が光る細やかな柄を選んで復刻しているのだと、当代の斉藤美紗子さんはいう。

 「こんなに繊細な表現ができるのかと感嘆なさるお客様も多いですね。それだけ東京の注染職人の技術が高いのだと思います」

 デザインをする図案師をはじめ、型紙職人、生地に型紙を置いて防染糊を付ける職人、染料を差す職人など、注染は分業で行われるが、多くの人の手を介するからこそ現れる揺らぎや味わいも注染の大きな魅力だという。

 これからの季節、斉藤さんおすすめの柄のひとつが「あられ」。ポピュラーな文様であり、丸きりという穴開けの道具を使うつくり方が多いが、丸久の型紙は職人が小刀でひとつひとつの粒を切り抜いたもの。本物のあられが舞い落ちたような、不揃いな形が味わい深い。10月に復刻されたばかりの「雁の群れ」は、秋の渡り鳥の飛来する様が愛らしく描かれている。雁はつがいの絆が強いため、縁結びの柄としても知られる。

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 毎年発表しているオリジナルの「干支てぬぐい」も人気が高い。日本画を専攻していた斉藤さん自らデザインを手掛けている。来年の干支である寅の手拭いは、「迫力のあるイメージの虎を落ち着いた雰囲気に仕上げたかった」と、円形の唐草模様に虎のモチーフを散りばめ、下のほうにはのんびり眠っている虎をあしらった。海老茶の地に金茶の虎、橙色や翡翠色のアクセントカラーと、注染らしい染め分けやぼかしが美しい。

 「最近はインテリアとして飾ってくださる方も多いですが、昔ながらの織機で織られた生地の上質さも魅力。速乾性や吸水性が抜群なので、ぜひ日常使いもしていただけたらうれしいです」

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※本記事は「東京江戸きらりプロジェクト」(2021年11月9日)の提供記事です。