進化する「トイレ」DX化で清潔・快適のその先へ

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 日本を訪れた人々が驚くもののひとつであるトイレ。日本のきれいなトイレ文化は、新型コロナウイルス感染拡大による世界的な衛生意識の高まりのなか、より多くの関心を集めている。進化を続けるトイレ回りの最近の事情を追った。

IoTがパブリックトイレの使いやすく衛生的な空間づくりに貢献

 フタの自動開閉、排泄後の自動洗浄など、高い技術で注目を集める日本のトイレ。なかでもタッチレスで手を洗浄できる自動水栓は、新型コロナウイルスの感染対策のひとつとして手洗いの重要性が増すなか、これまで以上に需要の高まりを見せている。

 そんな日本のトイレ業界をリードするのが、大手トイレメーカーのTOTO株式会社だ。TOTOではパブリックトイレの使いやすく衛生的な空間づくりのため、IoT技術を導入。利用者と施設管理者、双方の困りごとを解決するためのシステム「パブリックレストルーム設備管理サポートシステム」だ。

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個室の空き状況を表示するトイレ入り口のサイネージ

 利用者はスマートフォンやサイネージでトイレの空き状況を確認し、混雑を避けることができるので、コロナ禍における密集回避の手段としても有効だ。一方、管理者も器具のエラーや備品の補充状況がパソコンやスマートフォンで確認でき、効率的なメンテナンス作業を可能にする。

 この「パブリックレストルーム設備管理サポートシステム」を都内で初導入したのが、2021年7月、東京駅日本橋口前のTOKYO TORCH 常盤橋タワーに誕生した「nagomuma restroom」。TOTOと不動産ディベロッパー・三菱地所株式会社とのコラボレーションによる、身体と心をリフレッシュできる先進的なオフィストイレだ。

 「nagomuma restroom」の開発は2017年、「未来のトイレを一緒に考えてほしいとの三菱地所からの声がけでスタート。年の歳月をかけ、10年後の働き方やオフィスがどう変わっていくのか数々の議論や検討を重ねという

 「トイレの担う役割が用を足すだけでなく、リラックスやリフレッシュなど心身のコンディションを整えることだと想定し、オフィスワーカーのためのさまざまな仕掛けを構築しました。トイレにできることはまだまだあると思っています」と本プロジェクトを担当したTOTO特販本部 丸山智美氏は意欲を見せる。

 内装デザインは気分や好みで選べる種類。特徴的な六角形ブースに加え、照明とサウンドの演出によってリラックス効果を高める仕掛けを取り入れた。用を足すだけではなく、気分を切り替えてリフレッシュできる空間としてのトイレの実現に一役買っている。

用を足すだけで体調チェックが可能に?

 清潔で快適な空間づくりやアクセシビリティの向上、設備維持の効率化などが追求されてきた日本のトイレだが、デジタルイノベーションにより次なる段階に進もうとしている。TOTOが手がけるのは、まったく新しい水回り商品「ウェルネストイレ」の開発だ。

 TOTOが目指すウェルネストイレについて、広報部の山下名利子氏は、特別な器具を必要とせず、いつものように座って用を足すだけで、トイレが身体の健康指標をモニタリングしたり、健康状態に応じたリコメンドを届けたりするようなコンセプトです」と語る。

 現在は、実用化に向けた研究の真っ最中。デザインと機能が高度に融合したトイレの開発に期待が高まる。

 人生100年といわれる時代、いかに健康に過ごせるかは誰にとっても大きな関心事だ。血圧、体温、あるいは体重の増減など、日々の生活のなかで個人ができる健康管理はいろいろあるが、そこに新たなアプローチで挑もうとしている革新的トイレの登場が待たれる。

取材・文/干場千寿 写真提供/TOTO株式会社