再エネでグリーン化を加速! 変わるSDGs時代のオフィスビル

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 脱炭素化社会の実現に向けて、オフィスビルに入居する企業の間でもCO2排出削減ニーズが高まっている。不動産デベロッパー・三菱地所は2021年度から丸の内エリアのオフィスビルの使用電力を再エネ由来に切り替えるなど、「ビルのグリーン化」を推し進めている。

再エネ電力100%へ。三菱地所グループ全体でCO2排出量削減に挑む

 高層ビルや住宅が密集している東京では、CO2排出量全体の70%以上が建造物から排出されている(2019年度)。近年、大手不動産デベロッパー各社による「ビルのグリーン化」が加速しており、環境に配慮したビルが増えている。

 丸ビルや新丸ビルなど都心のオフィスビルの開発や運営を担う三菱地所株式会社では、サステナブルな社会の実現に向け、「三菱地所グループのSustainable Development Goals 2030」を策定した。

 その中で重要テーマを「Environment」「Diversity & Inclusion」「Innovation」「Resilience」の4つに設定。「Environment」では、「気候変動や環境課題に積極的に取り組む持続可能なまちづくり」を掲げ、CO2排出量削減に向けて積極的に取り組んでいる。

 三菱地所グループでは、脱炭素社会の実現を目指し、グループ全体の温室効果ガスの中長期排出削減目標(2019年4月にSBTiより認定済み)を掲げているが、着実に取り組みが進捗していることから、更に高い目標値を掲げることとした。2030年までに、CO2排出量を、2019年度比で、Scope1Scope2合わせて70%削減、Scope3は50%削減、再生可能電力比率は2025年までに100%を目指すという内容である。

 この目標について、三菱地所株式会社サステナビリティ推進部の吾田鉄司氏は、次のように説明する。

 「科学的知見に基づく温室効果ガス排出削減目標に関わるイニシアチブである『SBT』に基づく目標設定や、企業が事業で使用する電力を、2050年までに100%再エネで賄うことをコミットする協働イニシアチブ『RE100』に加盟して、目標達成に向けての姿勢を世の中にコミットしています。この目標を達成するべく、まずは当社が保有しているオフィスビルなどの建物で再エネの導入を進めています」

Scope1は自社燃料の使用による温室効果ガスの直接排出、Scope2は他社から供給されたエネルギーの使用に伴う間接排出、Scope3はScope1、Scope2以外の間接排出

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丸の内ビルディング(丸ビル)

2022年度中に、東京都内・横浜市内で所有する約50棟に再エネを導入

 三菱地所は再エネ電力の導入を促進するため、2021年度から丸の内エリアで保有・運営するオフィスビル19棟の全電力を「RE100」に対応する再エネ由来の電力に切り替えた。これにより丸の内エリアにおいて、約18万トンのCO2削減を見込めることになった。

 都内のオフィスビルを皮切りに、現在は横浜や名古屋のオフィスビルや商業施設などにも、RE100に対応する電力の導入を進めているという。2022年度までには、自社で保有するオフィスビルや商業施設約50棟が再エネに切り替わり、約34万トンのCO2削減となる見込みだ。三菱地所株式会社管理・技術統括部の坂井健一氏は、現在の動向についてこう説明する。

 「2030年までに再生可能電力比率を25%にするという従前の目標は、2021年度中に達成できる見込みです。現在は非化石燃料による発電だと証明する『トラッキング付FIT非化石証書』を用いるケースが多いのですが、いずれは一歩踏み込んで自社発電も考えていきたいと思っています」

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東京都千代田区の常盤橋タワー。常盤橋街区では2027年度に向け開発が進む

ビルオーナーとして再エネ電力活用のこれからを変えたい

 テナントが使う電力も含めて、ビル全体でRE100に対応する電力を導入しているところが大きな特徴だ。再エネ電力の導入は、コストアップになるため躊躇する企業は少なくない。しかし三菱地所は、次世代のオフィスビルにおいては再エネ電力の利用は必須になるという発想のもと、再エネ電力の導入に踏み切ったという。三菱地所株式会社スマートエネルギーデザイン部長の鯉渕祐子氏は次のように語る。

 「テナント企業もRE100SBTに基づく目標などを掲げてCO2削減に取り組んでいます。CO2削減を達成するためには、オフィスで使用する電力のグリーン化は不可欠です。ビルオーナーである三菱地所として、テナント企業のニーズに応えるためにも、再エネ電力の導入には積極的に取り組まなければいけないと考えています」

 また、率先してオフィスビルのグリーン化に取り組むことで、三菱地所の社会的責任を果たしたいと鯉渕氏は言う。

 「2050年までに脱炭素化社会を目指すためには、再エネ電力の普及と拡大が必要です。とはいえ、再エネ電力の販売先が増えなければ投資も進みません。コストアップになったとしても、電力の需要家(供給を受けて使用する者)が再エネ電力を使う姿勢を示すことが、脱炭素化社会実現の第一歩として求められているのではないかと考えています」

 業界のイノベーターとしてオフィスビルのグリーン化を目指す三菱地所。再生可能エネルギー由来の電力の導入を加速させることで、これからもサステナブルな社会の実現に貢献していく。

 オフィスビルが林立する東京では、脱炭素化社会を実現するために、新築だけでなく既築のビルでも再生可能エネルギーを導入することが急務といえるだろう。

取材・文/末吉陽子 写真提供/三菱地所株式会社