環境に配慮した超小型モビリティが都市交通を変える!?

Read in English
 環境への配慮、シェアリングエコノミーの推進、交通弱者のモビリティ向上といった観点から、日本での実証実験や導入が進む超小型モビリティ。大手自動車メーカーをはじめ、さまざまな企業が開発に取り組んでおり、東京は超小型モビリティの先端都市ともいえる。

コロナ禍以降、変わるモビリティ事情

 東京都は、2021年に明るい未来の東京を切り拓くための都政の新たな羅針盤となる「『未来の東京』戦略」を策定した。柱となるのは、デジタルや先端技術で都民のQOL(生活の質)を向上させるという方針。その中には、次世代モビリティの利用拡大に向けた検討も含まれている。

 2019年5月、国土交通省スマートシティモデル事業において先行モデルプロジェクトに選定された豊洲エリアでは、電動マイクロモビリティのインフラ整備が進行中。また、八王子市との連携で、電動のシェアサイクルを含むMaaS(マース)の実証実験を実施するなど、地域の特性や課題・ニーズに対応した移動手段のアップデートが模索されている。

 超小型モビリティとは、自動車よりコンパクトで、環境性能に優れた、1~2人乗り程度の車両のこと。2020年9月には国土交通省が、最高時速60km以下の超小型モビリティが一般公道を自由に走行できる環境を整備するため、道路運送車両法施行規則などを一部改正すると発表した。これを受けて、国内の大手自動車メーカーや新興企業が超小型モビリティの開発に着手した。

 住宅が密集している東京は、自動車が進入しづらい狭い路地が多い。また、歩行者の通行量が多い市街地では、自動車の通行制限や徐行運転の必要もあり、スムーズに移動できないことも。そこで、小回りが利く超小型モビリティが、日常的な近距離移動の新しい手段として注目されているのだ。超小型モビリティを利用することで、CO2の削減だけでなく、都心の駐車スペース不足や渋滞の解消も期待されている。

 コロナ禍以降、通勤手段を見直す動きも相まって、超小型モビリティのニーズは高まっている。FreeMile株式会社の電動モビリティ「Free Mile plus」の需要も拡大。自社ECサイトでのみ販売していたが、202012月からは全国20店の販売代理店を通じて店舗販売を開始した。

Mobility as a Service」のことで、一人一人の移動ニーズに対応して、公共交通機関をはじめ、カーシェアや超小型モビリティなどの移動サービスを組み合わせ、検索から予約・決済までを一括で行うことができるサービス

2_F1.3517.jpg
FreeMile株式会社の電動モビリティ「Free Mile plus」。原付ナンバープレートを取得すれば公道も走行できる

 見た目は電動キックボードに近いが、種類としては原付バイクの部類に入る。立ち乗りだけではなく、付属の座席を装着すれば腰掛けた状態で走行可能。開発や販売を手掛けるFreeMile株式会社の三本茜代表は、製品の特徴について次のように説明する。

 「一般的な電動キックボードに比べるとタイヤが大きく、デコボコした道も安定して走れるところが強みです。最高時速は45kmとパワフルで、原付ナンバープレートを取得すれば公道も自由に走行できます。電力のみで駆動するため、排ガスもなくエコなところが特徴です」

街の景色が違って見える。散歩するように走る

 「ワクワクするようなエモーショナルな価値を届けること」をビジョンに、2014年7月にFreeMile株式会社の前身となる会社を設立した三本氏。2018年から「利便性」「革新」「次世代」を掲げ、EVモビリティ事業を立ち上げた。

 Free Mile plusは、日本の公道に合った走行性能と革新的なデザインを両立したモビリティ。折り畳めるので持ち運びも便利だ。利用者は、2~3km程度の通勤に活用する人、屋外のレジャーやキャンプのおともに持参する人などさまざま。

 移動という切り口以外にも、Free Mile plusならではの「移動する楽しさ」があると三本氏は言う。

 「Free Mile plusに乗って走っていると、不思議と冒険心を掻き立てられるんです。自転車や原付バイクだと通れないような道も通れるので、ちょっといつもと違う道を走ってみようという気分になります。そういった意味でも移動+αの価値をもたらしてくれるモビリティだと思います」

 超小型モビリティは地域の手軽な移動の足としてだけでなく、観光利用や小口配達などの業務利用への活用も期待される。法整備が進み、超小型モビリティが普及していくと、都心の渋滞や駐車スペース不足の改善にもつながっていくだろう。

取材・文/末吉陽子 画像提供/FreeMile株式会社