キーワードから6秒で文をつくるAI! 「ELYZA Pencil」の可能性
公開11日で11万人が試した執筆AI
2022年3月28日、キーワードを数個入力すると約6秒で文章を生成できる、日本語の文章執筆AI「ELYZA Pencil(イライザ ペンシル)」のデモサイト(利用無料)が一般公開された。公開後11日間で11万人が利用、PV数は45万PVに達した。
「ELYZA Pencil」は、人工知能研究で著名な東京大学の松尾豊教授の研究室発のAIスタートアップ、株式会社ELYZA(東京都)が日本語の文章を生成できる大規模言語AI「ELYZA Brain」の開発に成功、その成果としてつくり出された。
公開デモサイトでは、ニュース記事、ビジネス用メール、職務経歴書の3種類の文章生成が可能。ELYZAでは、有料の法人向けサービスの提供も検討している。複数の企業と共同研究を行っており、各企業の業務に特化した機能を実装しながら、「こう書きたい、まとめたい」という利用者の意図を考慮した文章生成AIを目指して開発を続けている。
企業との共同研究では、たとえば、ウェブメディア用の原稿をつくる、会議後の議事録を短時間で作成する、専門性の高い資料をAIに読み込ませて注意点をあぶり出させるなど、大規模言語AIの機能を高め、各業務に特化させているという。
ELYZAの目標は、日本語を使うビジネスパーソンの文章を書いたりまとめたりといった時間のかかる業務を人に代わってAIに実行させ、経済活動により影響が生じる業務や誇りをもって行える仕事といった「本来やりたいこと」を楽しむ時間を増やすことにある。
日本語の3つの特徴がハードルに
世界のAI業界を見渡すと、大規模言語AIは2018年10月から急激に精度が向上し、2019年6月に英語のテキスト認識で人間の精度を超えたとされる。そしていま、AI業界のビッグトレンドは大規模言語AIにあり、世界的にグローバル企業やスタートアップなどが研究・開発を進めている。
しかし、英語に比して日本語AIの開発は格段に難しい。ELYZAの代表取締役CEO 曽根岡侑也氏は「当社のユニークポイントは大規模言語AIを日本語で使えるようにし、多用な業務に対して適用させてきたことです」と言う。
その難しさとは、日本語の「主語が抜けることがある」「単語の間にスペースがない」「文字の種類の多さ」。これら3点が日本語の特徴であり、実現に向けての課題だった。また、開発過程でAIに膨大なテキストを読み込ませる際、地球上に存在する日本語のテキスト量は英語の約10分の1程度しかないため、AIに読ませるデータが少ないことも開発上の困難となった。それでも日本語を扱うAIにこだわった理由を曽根岡氏はこう語る。
「2019年に大規模言語AIの精度が人間を超えた時、僕たち研究者は『すごい!』と感動しましたが、これによって日本の人々の仕事や生活の質を向上させるには『日本語を扱えるAIをつくることが重要』という考えに至ったからです。グローバルでまだ行われていない技術を、日本語AIで実装して普及させたなら、日本語でのビジネスだけインプット効率が数十パーセント高くなる、という可能性もあると思います。『日本発』でAI業界にインパクトを与えるものをつくりたいです」
「ELYZA Pencil」のデモサイト公開後、意外にも外国人や日本語講師の方々から「単語を入力すると、AIが文章を作成してくれるので、その単語の使い方を学ぶのに有効」など、日本語学習に役立つツールという評価も寄せられた。「ELYZA Pencil」はユーザーからの意見も取り入れつつ、日本語AIの開発で培った知見・技術を活用し、将来はほかの言語での展開も期待されている。
数多くの企業が研究・開発を進めている大規模言語AI。今後もビジネスや暮らしに役立つ多彩なサービスが登場するだろう。単純だが人間の手で行うと時間のかかる作業はAIに任せ、その分やりがいのある仕事やプライベートの楽しみに時間を使う。いまは、まさにその転換期を迎えているのかもしれない。
ELYZA Pencil www.pencil.elyza.ai
写真提供/株式会社ELYZA