LGBT求人サイトJobRainbowの挑戦、自分らしく生きられる社会へ
企業選びの指標がひと目でわかる
LGBTフレンドリーな会社と、そこで働きたい人をつなぐ求人サイト「JobRainbow(ジョブレインボー)」。現在、月間65万人のアクセス数があり、利用者はLGBTだけにとどまらない。
サイトには各企業の「ダイバーシティスコア」が表示される。これは「LGBT」「ジェンダー」「障がい」「多文化共生」「育児/介護」という5項目について企業の申告を基にJobRainbowが調査し、指標化したものだ。性的マイノリティだけでなく、障がいがある人など多様な人材が活躍でき、ダイバーシティやサステナビリティに取り組む企業の求人情報が集められている。
サイトを運営する株式会社JobRainbow(東京都)のCOO・星真梨子氏は、スコアについて、必ずしもすべての項目が満点でなくても掲載を歓迎していると話す。「ユーザーのスタンスや求める環境は千差万別。スコアはその人にとっての働きやすさを選ぶ目安です」
またJobRainbowでは、ダイバーシティについての企業の考えや取り組みについて取材し、インタビューを掲載している。第三者の視点で信頼できる情報を伝えることが重要だからだ。
「企業のブランディングを目的としてLGBTフレンドリーを利用していないか、本質的な取り組みは行われているのか、といったユーザーの不安を解消するため、具体的なエピソードを掲載しています。LGBTにとって働きやすい環境とは、男らしさ、女らしさといったジェンダー規範の押し付けがないこと。これは女性の働きやすさにも共通する条件です」
口コミサイトのリアルな声が起業を後押し
そもそものきっかけは2016年に始めた口コミサイトだった。真梨子氏の弟で、現在JobRainbowの代表取締役を務める星賢人氏が大学時代にゲイであることをカミングアウトし、LGBTサークルの仲間を中心に、就職活動の情報を共有。真梨子氏はそこでLGBTのリアルな声に触れたという。
「会社で差別的な発言をされたという話もあれば、逆にカミングアウトを受け入れてもらい、働きやすい環境を手に入れたという事例もありました。そこでLGBTフレンドリーな会社については社名を出して情報を掲示したのです。すると『こんな企業で働きたい』という問い合わせをいただく一方で、企業からは『LGBTについて関心をもっているので、このサイトで求人広告を出してみたい』とお声がけいただいた。双方のニーズの高まりを感じて求人サイトを立ち上げることにしました」
日本の企業に変化を起こすLGBT採用
JobRainbowの掲載企業は現在約500社。起業当初はスターバックス、ラッシュ、IBMなど外資系やコンサルタント会社が多かったが、最近は国内の大手企業、中小企業も増えている。長らく高齢の男性社員が中心だったとある企業は、LGBT採用を始めたことで社員の仕事に対するモチベーションが上がったそうだ。「最初は反発の声も多かったそうですが、ある一人のトランスジェンダーの方の素晴らしい仕事ぶりを見て周囲の偏見は崩れ、『突風が吹いた』ほどの衝撃が社内に走ったそうです」
求められている、ダイバーシティ研修
JobRainbowでは求人情報を提供するほか、企業向けのLGBT研修なども行う。パワハラ防止法やソジハラ、アウティングといったテーマに関して、企業の相談に応じることもある。
「LGBTフレンドリーな企業を目指すには、代表者の理解だけでは難しい。社内の賛同者を増やすためにも、これからは全社員向けに、無料のダイバーシティ研修も提供していきたいです。就職したその先の環境を整えることが、LGBT採用を成功させる上で重要なポイントですから」と真梨子氏は意気込みをみせる。さまざまなジェンダーの人がそれぞれ尊重される社会を目指すJobRainbowは、固定化した日本社会の偏見の壁を打ち崩す起爆剤となりつつある。
写真(静物)/藤本賢一