捨てられていくものに命を、蔵前発の再生蒸留所の飽くなきチャレンジ
コロナ禍の中、"循環経済を実現する蒸留プラットフォーム"をコンセプトに、廃棄素材を使用したクラフトジンの生産や、再生型蒸留所を運営するThe Ethical Spirits & Co.(エシカル・スピリッツ)が蔵前に誕生。地下に巨大な焼鳥工場がある力士たちのサンクチュアリ、少し前まで国技館とちゃんこの街だった蔵前は、いつのまにかブルックリンになりつつある。
まだコロナがやってくる前、東京イーストサイド清澄白河に大阪からフジマル醸造所がやってきて、サードウェーブコーヒーの代名詞ブルーボトルコーヒーが日本初出店に選んだのも、また清澄白河だった。
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エシカルスピリッツでは廃棄されていく酒粕や、カカオの皮、コロナで余剰になったビールなどを原料に、世界的にも評価が高い数々のジャパニーズクラフトジンを生み出している。
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蔵前駅から徒歩3分の東京リバーサイド蒸溜所 by The Ethical Spirits & Co.には、オリジナルのクラフトジンを売るショップがあり、その奥には蒸留所が併設されている。
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鳥取県で慶応年間から続く酒造、千代むすびの捨てられていく酒粕をリユースした「LAST」から始まったエシカル・スピリッツのクラフトジン造り。ただの再生ジンではない。
それは、日本酒生産工程の最後に生成される酒粕を再蒸留し、クラフトジンを生産して販売。その利益から酒米を蔵元に還元し、再度そこから日本酒を生産するという世界初の循環型"エシカルジンプロジェクト"だ。
その後もエシカル・スピリッツは、色々な素材にチャレンジしていく。
もともと、ジュニパーベリーの香りを主として、瓶詰めアルコール度数が37.5%以上であることさえ守れば、ジンは限りなく自由度の高い酒だ。ワインのように熟成期間も必要ないから、素材選びと添加するボタニカル選びのセンスで、新しく上質なジンを造り出せる可能性に満ちている。
「REVIVE from NINJA」は、古木茶の甘い香りが漂う日本茶のジン。茗荷、スダチ、煎茶の個性ある香りをカモミール、古木茶の甘い香りが包み込む。印象的なラベルデザインは、"異彩を、放て"をキャッチフレーズに福祉を起点に新たな文化を創るヘラルボニーとのコラボレーションだ。
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「REVIVE from BEER」は、コロナ禍の中、大量に廃棄されてしまうビールから造られたクラフトジン。素材であるバドワイザーの製法や背景をリスペクトしながら、バドワイザーを蒸留した原酒に、ブナチップを漬け込み、ビールを添加。その後ジュニパーベリー、ホップ、レモンピールを加え蒸留することで、捨てられかけたビールはジンとして蘇った。
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バドワイザーの再生で注目を集めた「REVIVE」シリーズは、その後、ベルギーを代表するホワイトビールである「Hoegaarden(ヒューガルデン)」と、アメリカンクラフトビールのパイオニアであるシカゴ発のIPAを再生した「REVIVE from Hoegaarden <Root>」
コロナ禍で2021年の夏までの段階で、既に廃棄危機となっていた、余剰ビール "約6万L" が 15,000本以上のクラフトジンとして蘇った。
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「CACAO ÉTHIQUE」は、秋田県の地酒 飛良泉の吟醸「粕取り焼酎」を原酒に、「Whosecacao」のスペシャルティカカオを使用。高品質カカオの、製造過程で処分されてしまうカカオハスクを蒸留し、香り高いカカオの風味が楽しめる。
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酒粕からビール、カカオハスクと様々な素材にチャレンジしてきたエシカルスピリッツが、併設されるStage by The Ethical Spirits & Co.1周年を記念して発表したのが2階のBar & Dinig、Stageのみで味わえる特別なジン「Stage GIN」だ。
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「Stage GIN」は、Stageのバーテンダーやシェフが、客たちに日々ジンについて伝えていく中で感じてきたことを集約。1周年を機に、"自分たちらしいジンを作ってみよう"という想いから始まったプロジェクトだ。
エシカル・スピリッツの蒸留責任者山口歩夢氏にもアドバイスを受けながら、良い意味でエシカル・スピリッツらしくない新たなテイストのクラフトジンが生まれた。
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食事に合うジンを、そして、クラシックカクテルに合わせられるジンを。それが、実際の現場で働くバーテンダーやシェフたちの共通した意見だった。今まで、エスカル・スピリッツにはなかったロンドンドライジンスタイルのジンだ。
限りなくドライでキレがいいジンは、ジントニックやマティーニにもぴったりで、食中酒としても色々な料理にそっと寄り添う。
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茨城県のニュートラルスピリッツ、佐賀県の天吹酒造の粕取焼酎をベースにして、ボタニカルには、ジュニパーベリーをはじめ、国産バレンシアオレンジ、レモン、ライムの柑橘の香り、グレインズオブパラダイス、アンゼリカルートなどの深みのあるスパイスたちが使用されている。
和歌山・善兵衛農園のバレンシアオレンジは出荷できないキズもの。見た目はキズがあっても中身は申し分ない。レモンピールとライムピールは、Stage営業時に余剰になった部分を使用。ヤマキイチ商店の、泳ぐほど鮮度の高い「泳ぐホタテ」。その通常廃棄される貝殻も使用している。
メンバー自らデザインしたラベルデザインは、通常廃棄される蒸留過程で生まれる飲用不能のヘッドアルコールを使い、アルコールインクアートに仕上げた。蒸留残渣の一部は蔵前のアップサイクルプロジェクト、蔵前Coffeeプロジェクトに渡し、堆肥に変わる。
1周年にふさわしいエシカルシステムが構築されている。
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ますます目が離せない街に成長していく東京の東、蔵前、近隣にはスピリッツ専門の立ち飲みスタンドなども誕生して、週末には街歩きを楽しむ人たちも多い。家庭やカフェの資源をアップサイクル原料として活用する"KURAMAEモデル"を提唱し、街ぐるみで持続可能な循環を目指す蔵前の街から目が離せない。