Tokyo Embassy Talk:
フィンランド人外交官が魅了された、コーヒー好きにはたまらない東京のカフェ
--日本のコーヒー文化に驚いたとか。
たいていのフィンランド人は、日本人は日本茶を飲んでいると思っているのではないでしょうか。東京には活気あふれるコーヒー文化があることを知って、うれしい驚きと、ちょっとした安堵感も覚えました。しかも、とても楽しい。なにしろ昔ながらの喫茶店もあれば、大手チェーン店もある。カフェラテをテイクアウトしたいなと思ったら、小さなスタンドカフェもあるし、自家焙煎のこだわりのコーヒーを淹れてくれる店もある。それも東京ではあちこちにあって、いつでもおいしいコーヒーを飲むことができるんです。
--お気に入りのカフェはありますか。
一番気に入っているのは、青山にある「リトル ダーリン コーヒーロースターズ」です。おしゃれで洗練されていて、都会的だけれど、緑に囲まれている。友達に「東京はテラス席がある店があまりないのね」と言ったら、ここに連れて行ってくれました。フィンランドなど北欧は全般的に、日照時間が長い時期が限られています。だから、温暖な季節はみんなとにかく外で過ごそうとするので、日本よりも屋外の席が多いのです。だから初めてリトル ダーリンへ行った時は、とても驚きました。まず、コーヒーがおいしい。これは私にとって必須条件です。それから、インダストリアルな雰囲気がある店舗デザインと外には緑いっぱいの芝生の広場。東京でコーヒーを飲むなら、ここが一番好きです。
何より気に入っているポイントは、店内にも、敷地内の広場にも緑があふれていること。自然光がたっぷり入るのもうれしい。フィンランド人は自然光と大きな窓が大好きで、家ではカーテンを閉めません。このカフェは、ミニマルなデザインの店内から見ると、広場側が全面ガラス張りになっていて、親がコーヒーを飲みながら芝生で遊んでいる子どもたちを見守っているような、コミューン(共同体)的な雰囲気が漂っていて好きです。どんな空間も、人がいてこそ素晴らしいものになりますよね。
--フィンランドの人に東京を紹介するとしたら、どう表現しますか?
大きくて、活気があって、驚きに満ちた街......。ちょっとありきたりの表現かもしれませんね。でも、東京の素晴らしいところの一つは、大都会から、いつも発見があることでしょう。小さな美術館に気付いたり、新しいカフェがどんどんできていたり、常に新鮮です。
私はロンドンに住んでいたことがあるのですが、200年前からロンドンにある建物は、おそらく100年後もそこにあるでしょう。東京では2年前にあった建物が別の建物になっている。これは東京という街を物語る現象のよう。まるでパッチワークです。ある場所で、そこにあったものが消えたかと思ったら、新しい形になって現れたり、別のものに取って代わられたりする。ところが、その隣には100年前とか500年前に建ったものが変わらずにそこに立っている。どうやって生き残ってきたのかわからないけれど、ものすごく古い木造の小さな居酒屋が相変わらず繁盛している。
<フィンランドの魅力>
Q1. フィンランドでぜひ訪れてほしい街は?
首都ヘルシンキから50kmほど離れたところにあるヴォー。小さな木造家屋や石畳の道、丘の上の教会など、中世の面影が残る小さな町ですが、今、食の町として最高に活気があります。昔ながらの地元のレストランもあれば、ヴィーガンレストランや燻製肉の店など、バラエティ豊かです。
Q2. お薦めのグルメは?
フィンランドでも最近はとても良質のクラフトジンがつくられるようになりました。たとえば、「キュロ」(Kyrö)は、2015年のインターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション(IWSC)のジントニック部門で最優秀賞を受賞しました。澄んだ水と自然のエッセンスが、特別なフィンランドジンを生み出しています。日本を含む世界中で愛され、販売されています。
レーッタ・プロンタカネン
写真(人物)/榊水麗
翻訳/藤原朝子