Tokyo Embassy Talk:
ジョージア大使の心の拠りどころ、人情味あふれる東京の商店街
--東京のどんな部分が印象的ですか?
東京といえば、ビジネスと娯楽がひしめく現代的な都市というイメージが強いですが、旅行者や外国人があまり足を運ばない場所もたくさんあります。私の場合、いろいろな地域の商店街を見て歩くのが大好きです。私自身の日常生活において重要な場所ですね。たいていの商店街には、何十年も家族で営んでいる店がいくつもあって土地柄がにじみ出ている。そこでその地域の方々とおしゃべりをすると、東京の人々の日常を肌身に感じることができます。
特に店主たちとの会話はとても楽しいですね。地域の歴史や、代々受け継がれてきた伝統や価値観など、たくさんのことを教えてもらえますから。昔の思い出話を聞いていると、彼らの人生を垣間見ている気がします。私だけでなく、東京に住んでいる人なら誰でも、昔から通い続けているお気に入りの店があって、日常生活で特別な存在になっているのではないでしょうか。
--お気に入りの店や商店街はありますか。
すぐに思い浮かぶのは、大学生時代によく通った目白台の三笠屋文具店です。おばあさんが営んでいて、デパートでは見かけないような文房具が揃っていました。今でも定期的に通っていて、この大使館で使っている文房具もすべてその店で揃えたんですよ。
現在の自宅に近い奥沢エリアの商店街にも親しみを感じています。昔、醤油でお馴染みのキッコーマンで会社員をしていた時から、通っている店があります。店主は90歳くらいのおじいさんですが、今も元気に店に立たれていて、訪ねるたびに懐かしい思い出話に花が咲きます。こうした交流はとても大切だと思います。ジョージアにも東京の商店街とよく似た文化があって、近所の知り合いの店や、昔からある店で買い物をすることで、日常生活を互いに支え合っています。
--ところで、先日ジョージア出身の力士の断髪式に出席されましたね。ジョージアと相撲の関係は?
ジョージア出身の3人の大相撲力士とは、彼らが初土俵を踏んだ時以来、私が大使に着任する前からの付き合いです。ヨーロッパで3人も幕内の関取を輩出している国はジョージアだけなんですよ。ヨーロッパ出身の関取第1号もジョージア人でした。3人とも十両以上に昇進したのも素晴らしいことです。ジョージア人大関が誕生して以来、ジョージアの人たちはみんな大相撲に夢中です。日本に来るジョージア人は、どの国の観光客よりも両国に行きたがります。両国国技館という名前も正確に言えますからね。
--ジョージアでは相撲が人気なのですね。
理由はいろいろありますが、一つには、ジョージアにはチダオバというモンゴル相撲に似た伝統的な格闘技があることが挙げられると思います。ジョージアの人たちはチダオバが大好きで、とても盛んに行われています。だから大相撲にも文化的な関心が高い。また、ジョージアの人たちは日本に敬意を抱いている人が多く、日本全般への関心も高い。多くの人がいつか日本に行ってみたいと思っているのです。3人の関取が誕生したことで、日本に対する関心はますます高くなりました。運命的なつながりとも言えると思います。
<ジョージアの魅力>
Q1. ジョージアでぜひ体験してほしいことは?
ぜひ、地元の人たちが催すスープラ(宴会)に参加して、ジョージアの食事やワインによるおもてなしを体験してほしいですね。
Q2. ジョージアの名産物は?
なにより8000年の歴史があるワインです。シュクメルリ(クリーミーなガーリックチキンスープ)などの料理もお薦めです。
ティムラズ・レジャバ
写真(人物)/榊水麗
翻訳/藤原朝子