よりおいしく、より多彩に。進化する東京の米粉パン
米粉だからこその味わいを追求
日常的に食べる機会が多いパン。小麦アレルギーやグルテンアレルギーなどの理由から小麦粉を避けた食生活を送る上で、小麦を使わない米粉パンに対する期待は非常に高い。これまで、「すぐに硬くなる」「アレルギー対応で我慢して食べるもの」という印象が強かったが、最近格段の進化を遂げている。
全国展開する大型スーパー、イオングループのプライベートブランドが目指すのは、手に入れやすくおいしい米粉パン。「おこめでつくったふんわりパン」は、賞味期限が3カ月というロングライフ商品で、防災用のローリングストック食品としても使いやすい。電子レンジで温めれば、米粉パンらしい、もっちり感が味わえる。
高い技術を注ぎ込む専門店
東京にはグルテンフリー専門のベーカリーもある。海外のグルテンフリーパンには雑穀を多種使うものが多いが、バラエティに富んだパンを作るのが東京都文京区の「ビオッサ(biossa)」。アメリカのグルテンフリー認証機構GFCOの認証を取得する日本で唯一の米粉パンベーカリーとして、食パンからバゲット、菓子パンまで提供する。
米粉の食パンは生地のキメが細かく、ふんわりしっとりしていて、口内ですっと溶ける。丸パンや塩バターロールなども、言われなければ米粉パンとは気づかないほどだ。
製パン技術を競う国際大会、モンディアル・デュ・パン世界大会で2019年に総合優勝し、世界一のパン職人の称号を持つ大澤秀一氏は、自身が営む「コム・ン」のグルテンフリー店として、2022年5月に東京都世田谷区に「コム・ン グルテンフリー(Comme'N GLUTENFREE)」を開店した。
コム・ン本店とは工房を分け、完全なグルテンフリー環境でパン作りを行う。「桜と日本酒」といった日本らしいフレイバーを取り入れたパン・ド・ミ、フランスパンの技術が生きるブリオッシュなどに加え、カヌレやスコーンなどのスイーツまで揃う。米粉パンのデメリットだと考えられてきた「膨らみが悪い」という特性を生かし、もっちりと歯応えのあるパンで具材をたっぷり挟むサンドイッチも人気だ。
東京都が取り組む米粉パンキャンペーン
東京都では農協と協力し、「日本、やっぱり米の国」をキャッチフレーズに米粉の活用を後押しする「TOKYO JAPAN」キャンペーンを2023年3月末まで展開し、米粉パンをアピールしていく。コンビニエンスストアや都内のベーカリーなど、身近な場所で米粉パンが認知されていくだろう。
日本米粉協会によれば、今後、米粉と小麦粉をブレンドした米粉入りパンも市場にどんどん登場する見込みだという。米粉パンの進化に今後も注目したい。
写真/河内 彩