東京都の4割は森林!都市と森林をつなぐ多摩産材の魅力

 東京都が、森林面積4割を占める世界有数の自然に恵まれた都市であることは意外と知られていない。東京都の森林の多くを有するのは、東京23区の西側、30市町村からなる多摩エリアだ。なかでも西寄りの6市町村(八王子市・青梅市・あきる野市・日の出町・奥多摩町・檜原村)で育った多摩産材の積極的な活用を試みる動きが加速している。
伐採したヒノキを使った時計や照明などの工芸品。木目が一つひとつ異なるから同じものは二つとないのが魅力だ。

国産材の有効活用が森林を豊かにする

 森林資源の有効活用は、都市と森林、双方の環境を豊かにする。木を使った建物や家具に安らぎを覚える人は多いだろう。都会の暮らしに木を取り入れることで、生活環境を改善できるはずだ。同時に、利用期を迎えた木を使うことは森林を守ることにもつながる。森林では、適切な間伐を怠ると日光が地面に届かなくなり土壌が流失しやすい。樹齢の高い利用期の木を伐採し、木を有効活用する一方で、新しい木を植えて育てるサイクル「循環利用」は、都市と森林の環境を豊かにする仕組みなのだ。

 11月1617日に東京都で開催された「多摩産材利用拡大フェア2022」に集結したのは、多摩産材を有効活用している事業者たち。多摩産材を使ったテーブルやおもちゃ、ブラインドからサウナ室まで多岐にわたる製品を展示し、活用事例を紹介した。

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東京都の森林の多くは人工林で、スギとヒノキが多摩産材の大半を占める。

木材の地産地消への取り組みが盛んに

 10年以上前から公共施設やオフィスでの多摩産材の活用を提案してきた株式会社イトーキの金原徹氏は、「ここ数年、都内の公共機関や企業からの問い合わせが増え、多摩産材のニーズの高まりを感じます」と話す。森林の有効活用が、地球温暖化防止や水源の浄化などSDGsの達成につながることが広く認知されるようになってきたのだ。

 「企業や公共施設の受付カウンター、会議室のテーブルなど人が集まる場所に多摩産材を使用する事例が多いですね」と金原氏。木の優しい手触りや温もりは、利用者のストレス軽減にも役立っているという。

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2018年にリニューアルした多摩モノレール立川南駅のベンチに多摩産材を使用。温かい雰囲気を演出している。©多摩都市モノレール株式会社

 住宅の内装や家具としてだけではなく、多摩産材を使った雑貨にも注目だ。「ヒノキは水に強く、腐りにくいので、加工に向いています。香りのよさや経年によって色が変わっていくのも魅力です」と話すのは、東京都東大和市に工房をもつこだま堂の片桐勝利氏。都内の企業から多摩産材を使ったオリジナル製品のオーダーも増えている。

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コースターやキーホルダーなど多摩産ヒノキを使った製品。部屋に置くとヒノキのいい香りがする。

豊かな体験を生み出す多摩産材

 多摩産材は、子どもたちの木育にも活用されている。保育施設の内装や遊具、什器の製造を行う株式会社東京・森と市庭は、子どもや指導者向けのワークショップにも力を注ぐ。端材を使った木工ワークショップでは、あえてテーマを与えないこともある。「どの子も夢中になって自分のつくりたいものをつくります」と同社の五十嵐正雄氏。大小さまざまな形をした木は、子どもたちのモノを生み出す力を刺激するのだ。

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薪を使ってつくった「マキンバ」は、素朴な響きが子どもたちだけでなく大人にも人気だ。

 秋川木材協同組合は、多摩産材を使った製品を販売するマルシェや多摩の森を歩くエコツアーを実施し、多摩産材の魅力を力強く発信する。

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ガイドとともに森を散策した後、原木市場や製材所を見学する「東京の木・多摩産材エコツアー」。©秋川木材協同組合/東京グリーンエコツーリズム

 多摩産材の活用は都市と森林の循環を促し、都民の暮らしを豊かにすると同時に、地場産業の活性化にも役立つ。外国産材ではなく多摩産材を使うことは、輸送時のCO2排出量を減少させるだけでなく、木材価格が高騰するウッドショックへの対策にもつながる。多摩産材と触れ合う機会はどんどん増えているので、ぜひチェックしてほしい。

取材・文/今泉愛子
撮影/田中秀典