Tokyo Embassy Talk:
韓国文化院長が気付いた、伝統とモダンが融合する東京の奥深さ

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 韓国と日本を結ぶ交流事業を展開する駐日本国大韓民国大使館 韓国文化院の孔炯植(コン・ヒョンシク)院長が、昼休みにスタッフとともに向かう先は四谷・荒木町。この町を通して知る、東京の奥深さとは?
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コン・ヒョンシク駐日韓国文化院長。同院内にある、韓国の伝統的応接間が再現された「サランバン(舍廊房)」にて。

--東京には2度目の赴任だそうですね。

 初めて東京に赴任したのは2010年でした。駐日韓国大使館で文化広報官を務め2014年に帰任し、2021年に駐日韓国文化院の院長として再び東京に戻ってきたんです。大使館は南麻布にあるのですが、韓国文化院は四谷にあり、大好きな荒木町に昼休みにも通えるようになりました。

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インタビューには堪能な日本語で手振りを加えながら答えてくれた。

--荒木町には、どんな魅力があるのですか?

 細い路地に立ち並ぶ木造建築など昭和の雰囲気がそのまま残っていて、日本の古き良き文化を感じることができます。ソウルは80年代から急速に近代化が進み、今はほとんど昔の街並みが残っていないんです。私はソウル育ちですが、荒木町に行くと、子どもの頃の記憶が甦ります。

 荒木町を知るまで、東京はとても近代的な都市だと思っていました。以前の勤務地である南麻布、六本木や広尾などの洗練された街並みも大好きで、今も住まいがありますし、休日にはよく散歩をしています。六本木ヒルズの高層ビル、けやき坂の幻想的なイルミネーション、緑豊かな有栖川公園がある一方で、昭和時代を感じさせる荒木町もあるところに東京の奥深さを感じます。

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お気に入りの散歩コースは、自宅から近い東京タワーが見える六本木のけやき坂周辺。Photo: KONG HYUNGSIK

--好きな料理店を教えてください。

 一番気に入っていたのは、おちあいという店ですが、最近閉店してしまいました。透明なスープでいただく芋鍋が滋味深くて、よく通っていたんです。1964年の東京オリンピック前からあった古い店でしたが、東京2020大会後ほどなくしてなくなりました。東京に戻ったら真っ先に訪れようと思っていたので、とても残念です。芋鍋はクセになるような美味しさで、私が連れて行ったスタッフは、私が帰任した後も通い続けていました。

 とんかつの名店、鈴新にもよく行きます。ここも古くから営業している店で、年配のご夫婦と息子さんが切り盛りしています。煮カツ丼、かけカツ丼、ソースカツ丼と3種類のカツ丼がありますが、私はサクサクのかけカツ丼が好きです。

 あとは手頃なちらし寿司が楽しめるお店にもよく行きます。街を歩いている時に気になったお店に入ってみることもよくあるんです。

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韓国でも大ヒットした映画『君の名は。』に登場するとファンの間で考えられている、韓国文化院近くのカフェにて。Photo: courtesy of KONG HYUNGSIK

--韓国でも大ヒットしたアニメーション映画『君の名は。』にまつわる場所もお気に入りだとか。

 私の散策のコースに入っているある神社が、映画の中に出てくる神社のモデルではないかと考えられています。また、韓国文化院近くにあるカフェも、主人公のアルバイト先の店のモデルと言われていますね。韓国からお客さんが来ると、まずここへ案内してパスタを食べて映画の話をしてから、その神社へ連れて行くと、すごく喜ばれます。韓国文化院は、ちょうど二つの中間に位置するので、とても便利です。

 ここ韓国文化院では新旧さまざまな韓国文化を発信していますので、ぜひ一度訪れていただきたいですね。

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駐日韓国文化院内には、屋上庭園、ギャラリー、ホール、韓国語・文化教室のほか、ドラマやK-POPを紹介する韓流エンタメショールームもある。

<韓国の魅力>

Q1. 韓国でぜひ訪れてほしい場所は?

 韓国の南東部、安東にある陶山書院(トサン・ソウォン)と屏山書院(ピョンサン・ソウォン)です。書院とは朝鮮時代にあった私塾で、儒学者を祀り、儒学の教えを学ぶ場でした。建物の後ろには山が広がり前には川が流れ、とても風光明媚なところです。全国で9つの書院が世界文化遺産に登録されていますが、特にこの2つをお勧めします。

Q2. 韓国で今もっともホットなスポットは?

 ソウルの大学路(テハンノ)です。劇場がたくさんあって、名作ミュージカルから新作まで毎日色々なミュージカルの公演を観ることができます。ここで活躍した俳優が後にドラマや映画でブレイクすることも多いんです。近くには美味しいレストランもたくさんあります。

コン・ヒョンシク

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成均館大学卒業後、国家行政考試を経て公職に就く。2006-2009年には駐国連韓国代表部文化広報官を務める。2009年からは日本の文化庁、スポーツ庁、観光庁にあたる文化体育観光部に勤務し幅広い政策に取り組む。2021年11月より、駐日本国大韓民国大使館 韓国文化院長。

駐日韓国大使館 韓国文化院

https://www.koreanculture.jp/
取材・文/今泉愛子
写真(ポートレート)/榊水麗