City-Tech.Tokyo:
東京に集結、循環型経済を実現する画期的なスタートアップ企業

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 廃棄素材の活用を掲げる日本とシンガポールの革新的なスタートアップ企業2社が、2023年2月27、28日に開催された国際イベント「City-Tech.Tokyo(シティテックトーキョー )」に参加した。
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「City-Tech.Tokyo」内のピッチイベントのスピーチで、未利用資源と微生物が循環型経済の実現に貢献すると述べた、ファーメンステーションの酒井里奈CEO。

認知されつつある、「ゴミゼロ」のビジネスモデル

 持続可能な都市づくりを目指す東京都がこのほど開催した、スタートアップ企業向け国際イベント「City-Tech.Tokyo」。都市の抱える課題解決への貢献をテーマとするこのイベントの目玉の一つが、35カ国から338社が応募したピッチイベント「City-Tech Challenge」だ。そのセミファイナリストに、廃棄物のアップサイクルで注目を集める日本とシンガポールの循環型経済スタートアップ企業、株式会社ファーメンステーションとAlterpacks有限責任株式会社が選出された。

 ファーメンステーションは、東京に本社を構えるバイオテクノロジー研究開発のスタートアップ。2009年の創業以来、独自の発酵技術を用いたアップサイクル市場の先駆け的存在として活動中だ。岩手県奥州市にある製造工場では、食品・飲料工場の製造過程等で出る副産物・食品残さなどの未利用資源からから生成したバイオエタノールや発酵素材を、化粧品や衛生用品、洗剤、除菌スプレーといった日用品に生まれ変わらせてきた。

 ファーメンステーションの研究者たちは10年をかけて、余ったご飯やリンゴの搾りかす、不揃いのバナナなどの「使い道のない」廃棄物に関する研究を行なった。その成果として、岩手県の休耕田で栽培した有機米と食品・飲料メーカーから出る廃棄物を原料に、麹菌と酵母を組み合わせた発酵プロセスを開発。この過程で生まれる発酵エキスは、化粧品だけでなく、牛や鶏の飼料にも活用できる。

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ファーメンステーションは、同社が製造するさまざまな香りのエタノールをイベントブースで展示した。

 「私たちの素材は、スキンケアやボディケア製品など、200以上のアイテムに使われています」と、ファーメンステーションの酒井里奈CEOは、イベントのピッチセッションで審査員と聴衆を前に語った。「私たちは、アップサイクル素材の市場を創造してきました」

 現在15人のスタッフを抱えるファーメンステーションは、日本の主要ブランドと連携し製品を全国展開するほか、フランスでも販売を開始している。彼らの廃棄物実質ゼロのビジネスモデルは、グローバル・ブレインなどのベンチャーキャピタルから投資を受けており、またアメリカの非営利団体B Labが高い社会的・環境的パフォーマンスを示す企業に与えるB コーポレーション(Bコープ)ビジネスとしても認定済みだ。

 今後は、化粧品やボディケア製品にとどまらず、飲料、エネルギー、バイオケミカル市場向けの製品群も視野に入れているという。東京都は、2050年までに食品廃棄物をゼロにするという目標を掲げているが、これに対しても、廃棄食品群を手指消毒用のアルコールや、公共交通機関および民間航空機の動力源となるバイオ燃料で貢献できると酒井氏は言う。「私たちの目的は、社会を再生可能なものへ転換させていくことです。ファーメンステーションは廃棄物にあふれた世の中を、廃棄物ゼロの社会に変えることができるプラットフォームなのです」

使い捨てプラスチックの代替品に

 もう一つの循環型経済スタートアップ企業が、使い捨てプラスチック問題に取り組むべく、2019年に設立されたシンガポールのAlterpacksだ。彼らは、ビール工場などから出る麦芽や小麦、大麦といった使用済み穀物や、ココナッツの殻などの農業廃棄物など捨てられてきた穀物を活用。独自の製法で穀物を圧縮・整形し、二段容器、ボウル、弁当箱など頑丈で油脂にも強い食品容器やカトラリーを製造する。

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Alterpacksの食品容器は、飲料の醸造過程で廃棄される穀物などから作られており、100%オーガニック。再利用も可能だ。PhotoAlterPacks, and Print Lab

 Alterpacksのエコな食品容器は驚くほど軽量だ。洗えば2回は使用可能で、冷凍庫保存や電子レンジにも対応する。100%オーガニックの土に還る素材でできており、環境に悪影響を与えずにプラスチックの機能を備えているものだという。

 Alterpacksによれば、いまのところ同社製の容器は一般的なプラスチック容器より3割ほど高くついてしまうが、十分な規模の量産ができれば、遜色ない価格を達成できるという。202212月から商用利用を開始し、すでにシンガポールをはじめとする東南アジア諸国やオーストラリアの食品会社やレストラン、ホテルで利用されている。

 「使用済み穀物という素材は、世界中のたいていの国にある。たとえば日本はビールの生産量が世界第7位ですね」と、Alterpacksの創業者であるカレン・チアーCEOは、ピッチイベントの壇上でこう呼びかけた。「誰かがビールを飲んだり、麦芽飲料を作ったりするのは我々にとってとても有益なこと。その過程から私たちの原材料が生まれるのですから」

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ピッチイベントで熱弁をふるったAlterpacksの創業者兼CEOのカレン・チアー氏。今回Alterpacksは、期待のスタートアップに贈られる賞を受賞している。

 Alterpacksは製造業で使用されてきた燃料用石油樹脂に代わるバイオペレットも開発中だ。国連開発計画の「プラスチック汚染撲滅のためのイノベーションチャレンジ(End Plastic Pollution Innovation Challenge, EPPIC)」や「エンタープライズ シンガポール サステナビリティ オープンイノベーションチャレンジ」では賞を獲得している。

 他国の投資家も関心を寄せており、同社は創業前の段階で、Plug and Play APACSEEDS CapitalEarth Venture Capitalなどから100万ドルの資金を調達。食品と容器のさらなる持続可能な利用を求めるチア―氏の呼びかけは、多くの賛同を得ている。

 「Alterpacksは、食品ロスという存在に新たな経済価値を創出します。これまで捨てられていた食品をアップサイクルし、プラスチック樹脂やプラスチック容器に置き換えるという、より高い付加価値を加えてサプライチェーンに戻すのです」と、チアー氏は言う。「わが社の技術で食品ロスという問題を抜本から変えられます。地球環境と持続可能な世界は両立させられるのです」

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東京国際フォーラムで開催された「City-Tech.Tokyo」。スタートアップとのオープンイノベーションを通じた、持続可能な社会の実現を目的とする。

 東京国際フォーラムで2日間にわたって開催された「City-Tech.Tokyo」では、41カ国から328社のスタートアップが自社の製品やサービスを紹介した。インフラ・社会基盤、環境、生活、そして文化という4つのテーマで開催され、来場者は26000人以上に上った。

City-Tech.Tokyo 2023
https://city-tech.tokyo/
取材・文/ティム・ホーニャック
撮影/殿村誠士
翻訳/安藤智彦