想像力を働かせ、チャンスを逃さない工夫を重ねる
知的財産を守りながら活用する
知的財産の保有者と利用者をマッチングするプラットフォームの運営や、無断で商用利用している画像をAI(人工知能)が自動で発見するサービスを展開しています。知的財産とは人間の発明によって生み出されたアイデアや創作物など、財産的な価値をもつものの総称のこと。私たちはそれぞれの企業がもつ無形の価値を守りながら、積極的に活用して収益につなげるサポートを行っています。
知的財産と出会ったのは、出産を機に当時勤めていた職場から一度離れたタイミングでした。家族が以前経営していた企業の知的財産が有効活用されていないと偶然わかり、詳しく調べてみると、多くの企業が同じような課題を抱えている状況を知りました。そこで2019年に会社を立ち上げ、知的財産に関する課題を解決するサービスを始めたのです。
APT Womenとのつながりは、東京都の起業支援施設「TOKYO創業ステーション」に訪れたことがきっかけでした。APT Womenの卒業生がイベントに登壇していて、堂々と話す女性起業家の姿や簡潔で共感できる発表内容に強く惹かれたのを今でも覚えています。私も会社を経営する上で包括的にビジネスについて学びたいと思い、全8回の育成講座すべてに参加し、アクセラプログラムにも応募しました。
相手の視点に立ち想像力を働かせる
知的財産の保有者と利用者をマッチングするプラットフォームは、これまで多くの企業や個人経営者の皆様にご利用いただいています。「独自の技術やノウハウをライセンス化して、新たな収益源にしたい」「新規事業に必要なノウハウを補完できる共創相手を探したい」など、需要に合わせて様々な使い方ができるのが特徴です。
ありがたいことにプログラムを通じて海外企業との提携も決まり、これまで多くの企業と協業を進めてきました。そういった場面で常に私が気を付けていたことは、相手の視点に立ち想像力を働かせること。事前に商談相手のリサーチを入念に行い、目の前の担当者の立場によってその方にもメリットがあるように考えて行動する。細かい配慮はもちろんですが、チャンスを逃さない工夫こそが重要だと考えています。
例えばピッチイベントの場では、オーディエンスが誰かを常に意識するようにしています。具体的に何が目的で、どういったメッセージを届けるべきか。相手は協業を求めているのか、それとも出資先を探しているのか。相手が求めている情報やイメージを掴めると、発表内容やプレゼンテーションの構成も自然と変わってくるはずです。協業に向けた会議では終了後にフォローアップのメールを送信するなど、一歩先を見据えた地道な行動を取るように心がけています。
日常生活に欠かせない趣味
ひとつひとつの出会いを大切に、誠意をもって対応する
ビジネスシーンでは信頼関係の構築が肝になると感じています。リサーチの一環で色々な情報を聞いてくる企業もあると思いますが、重要なのは相手企業や担当者との相性を見ながら、共有する情報の粒度や量を調整すること。私はお互いの相性が確認できるまでの間は、提供する情報を調整しながら自社をアピールするように留意していました。
もちろん取引や協業を進めるうえでは、相手のカルチャーを理解し、互いに学ぶ姿勢が欠かせません。ひとつひとつの出会いを大切に、誠意をもって対応する。そういった積み重ねを大事にすると、見えてくる景色も変わってくると思います。
海外では知的財産の保護や活用といった認識がすでに浸透しつつありますが、日本ではまだまだ認知度が高くないのが現状です。これからは日本でのサービス展開に注力しつつ、海外企業との協業も見据えながら、事業を拡大していきたいと思います。
message 起業家への応援メッセージ
チャレンジにマイナスな要素は何一つありません。どのような道を進んだとしても、自分の人生の経験値を上げるきっかけになると思います。APT Womenは挑戦を後押ししてくれるプログラムですし、応募することで頭の整理にもなります。また、同期のメンバー同士でそれぞれが得意な分野を教えあっていて、共に高めようとする機運が心地いいですね。志の高い仲間と出会えて、本当に嬉しく思います。 皆さんも行動にブレーキをかけず、自分を励ましながらチャレンジしてみてください。知的財産取引所株式会社
代表取締役COO 伊勢 幸恵 氏
*「APT Women(Acceleration Program in Tokyo for Women)」は、東京都による女性ベンチャー支援プログラムです。