Z世代が感じている日本のリアル:長谷川ミラ|TMCトーク Vol.14

 本記事は2021年8月28日に東京都メディアセンター(TMC)が実施したTMCトークでのZ世代のモデル・長谷川ミラさんの講演を書き起こしたものです。
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Z世代が感じている日本のリアル:長谷川ミラ|TMCトーク Vol.XX

 長谷川ミラです。皆様、今日はよろしくお願いいたします。本日は「Z世代が感じている日本のリアル」という講演をさせていただこうかなと思います。
 まず簡単に私の自己紹介からさせてください。

 私は、東京生まれ東京育ちの1997年生まれ、Z世代になります。普段はモデルであったり、ラジオであったり、あとは自分のソーシャルメディアのプラットフォームを使って社会問題について発信しています。私は、父が南アフリカ人で母が日本人になるんですね。バックグラウンドも少しグローバルになります。

 私のことをメディアなどでご紹介いただく際には、よくジェネレーションZZ世代やGenZと言われます。ジェネレーションZというのは、よくマーケティングとかビジネスで使われるのかなと思うのですが、1995年生まれから2005年生まれのデジタルネイティヴ世代ということで、中学時代にソーシャルメディアを使い始めた世代になります。今日はそんなジェネレーションZの私が日本で生活していて、そして海外で生活して感じたことなどを中心に展開していけたらなと思います。

 まず私は、2017年に『テラスハウス』というNetflixのリアリティーショーに出させてもらって、そこから、それこそソーシャルメディアのプラットフォームを多く持つことができました。多くのフォロワーさんを持つことができたことで、もう少し、よりコネクトしたいなと思って、もともと大好きだったファッションのブランドを、それを機にスタートさせることになったんですね。JAMESIEっていうオールジェンダーのブランドになります。

 私の英語名がジェニファーになるんですけども、私の父がニックネームとしてよく JAMESIEと呼んでいたので、すごく女性的でもなく男性的でもなく、すっと入ってくる言葉になるんじゃないかなと思い、JAMESIEという名前のブランドを作らせていただきました。

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 それで今スライドに出ているのが、今年のJAMESIEで作ったTシャツとかトレーナーなんですけども、これが100%リサイクルポリエステルでできたものになっています。ブランドを始めた当初は、さっき言ったようにリアリティーショーに出ていたので、ポップアップストアとかを行った際に、フォロワーの方やファンの方が「ミラちゃーん!」と来てくれるんですね。そうなったときに皆、ワーッて来てくれるんですけど、私は何も皆に情報とかを提供できていなくて。私は「ミラちゃーん」と言われて「ワーッ」で終わっていいのかなって葛藤がありました。

 ブランドの大元のコンセプトは、オールジェンダーブランドでしたけども、もっともっと皆にとっても学びのあるポップアップにしたいし、学びのあるブランドにしたいなという想いが、ブランドを続けていく上ですごく出てきたんですね。なので、当初はオールジェンダー、男性にも女性にも性別関係なく着てもらえたらなと思っていたんですけども、最近だと、こういったサステナブルな素材の商品を作っています。

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 そして、ブランドを続ける上でよりファッションのことについて知りたい、もっと学びたい、もっと本質的な情報を知りたいという想いから、セントラル・セント・マーチンズ・カレッジという大学に行きました。ファッションの中では、世界でトップの大学に無事に合格することができ、2018年ごろにロンドンに留学しました。これがかなり私にとって大きな転機になったんじゃないかなと感じています。

 そうしてイギリスでの一人暮らしの生活が始まったんですけども、イギリスでの生活について少し話したいと思います。そもそも日本にいたときも、いろんな社会問題がありますよね。ジェンダーの問題だったり、環境問題であったり、政治問題もあったり、貧困の問題もあったり、人種差別があったり。本当に数え切れないほどたくさんあるんですけども、こういったことを当時、2017年、18年になかなかテレビをはじめ、メディアで聞くこともなかったですし、そんなに友人の間でもメインのトピックになることはなかったんですね。

 ただ、イギリスでの生活では、例えばふらっと入ったカフェとかで隣に座っている夫婦が、当時のイギリスだとブレグジットの真っ最中だったので、このブレグジットについてどう思うか?っていう議論を夫婦間でしていたり、たまたまタクシーに乗ったときに「君はどこから来たの? 何人なの?」って言われて、「アイムジャパニーズ、日本人」って言ったら「君は、今回のブレグジットの問題についてどう思う?」みたいな問いかけを、全然知らない人にされて。これは日本で経験したことないなと。で、聞かれたところで、イギリス生活しているけれど、私はイギリス人じゃないし、私はどう思うんだろう?みたいな。政治にはもちろん興味あったし、ニュースは見ているほうでもいたんですけども、実際に質問されたり自分の意見を言うとなると、何も言えないことに気づいたんですね。

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 それは学校の外だったんですけども、学校に行っても、この写真は友人のプロジェクトなんですが、プロジェクトを進める上で、ただただファッションってかっこいいものとか、美しいだけのものではないんですね、もともとファッションというのは社会問題とかを照らし合わせて作品にしたものだったりするんです。オートクチュールの、それこそ皆さんが知っている大きなブランドも、コレクションテーマが毎回あるんですよね。例えば男女平等についてとか、そういう裏テーマがあってファッションというものができているんです。

 先程のような「自分はどう思う?」と意見を求められたときに答えられなかった、そういった葛藤からどうにか自分も答えられるようになりたいし、そして日本にその後帰ったときに、あれ?日本ではなかなか社会問題についてまだ話さないよね、テレビでもまだLGBTQの人を馬鹿にする文化ちょっとあるよね、ちょっとお笑い要素入っていたりするよね......という矛盾が生まれたんですね。そこから私はファッションを介してどうにか変えられないかなと動き始めました。

 そこからファッションを介して、ただ環境に悪いことはよくないよね、差別はよくないよね、ではなく、ファッションを介して何か(もっと)発信したいと思い、そこからファッションについてより勉強するようになりました。例えばファッション業界について言うと、皆さんが今着ている洋服、どんな素材のものが多いですか。綿ですか、コットンですか、ポリエステルですか。 ポリエステルって実は何からできているかな、ペットボトルだったりするんですよね。ペットボトルと同じ成分の石油からできている。その石油由来の洋服を洗濯することで、マイクロプラスチックが流れてしまっている。そのマイクロプラスチックが今海に流れて、海洋プラスチック問題に例えば繋がってきている、とか。

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 今写真で出ているように、「I don't want to DIE for FASHION」というボードを持っている方がいますけども、2013年にファッション業界で大きな話題となったバングラデシュの建物崩壊事件がありました。皆さんが着ているであろうファストファッションの洋服は、発展途上国の本当に環境の悪い中で作られていることがほとんどです。それをどこで勉強したかというと、この写真の右側にある『The true cost』という一つのドキュメンタリーだったんですね。ぜひこの講演のあと皆さんに見ていただきたいなと思うんですけども、私はInstagramでフォロワーさんにおすすめしてもらったんですが、こういったドキュメンタリーなどを介して勉強するように、まずはなりました。

 私は最初申し上げたようにリアリティーショーに出たこともあってフォロワーさんがいたので、「よし。こういう情報を勉強して、せっかくイギリスに留学しているんだから、もっと現地の情報を、もっと自分が感じていることをInstagramを通じて皆に発信しよう」と思って、こういうドキュメンタリーだったりとか、いろいろインターネットで調べるようになったんですけれども、その中でフェイクニュースというものに出会うようにもなりました。

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 この83%という数字は、ニュースがパッと出たときに、偽のニュースを本当と信じてしまう確率です。今それこそ新型コロナウイルスによる感染状況の中で、この1年半、いろんなフェイクニュースが問題になりました。例えば、私がフェイクニュースと感じたのが、皆さんがよく知っている大手ファストファッションブランドの労働環境について、英語で検索したときと日本語で検索したときの検索内容が全然違ったんですね。スポンサーや企業は、日本ではとても強いので、ほぼニュースが取り上げてくれない。英語の記事になると、記事が出てくる。こういったところで、ネットに対する、なんでしょう、恐怖じゃないですが、信頼というものを置けなくなってしまった。かつインフルエンサーとしての責任というのを自分で感じていたので、こういうフェイクニュースが溢れているなかで私が勝手に「そうなんだ、こうなんだ」というのをInstagramで発信するのはどうなんだろうと思い、私は次のような行動に移しました。

 先ほど言ったように、ファッションというのが私の中でキーでしたので、まずは帰国後に、MIMO という(社会問題×ファッションの)コミュニティを運営するのを始めました。

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 このコミュニティを作った大きな理由としては、私がInstagramで発信するようになったときに、実は既に行動している同世代からメッセージをもらうことになったんですね。いろいろメッセージをもらううちに、「皆フォロワーさん同士で繋がって、よりコミュニケーションが取れるようになったらいいんじゃないかな」と思っていて、皆のためのコミュニティということで、MIMOというものを作らせていただきました。ここでは写真にもちょっとありますけど、一緒にゴミ拾いに行ったりとか、定期的に今回のような講演を行ったりとか。私もこういうお仕事させてもらっているので、日本のセレブリティの方をお呼びして、今後は講演したいなって思ったりしています。

 何が問題かというと、今日本のZ世代やミレニアム世代は、社会問題について知ることができても、アクセスがあっても、なかなか家族や周りの友人と話せない。話し始めると「意識高いね」と言われたり、何かちょっと違う人とか、「何か...頑張って」って、距離を持たれてしまう。それって何でだろうと思ったときに、私たちがそもそも子どものときからこういった社会問題について話すことに慣れてないからなんじゃないかな、と思いました。まずは少なくともこのコミュニティ内では、そういうジャッジはなし。「コンフォートゾーン」といいますけど、皆にとってこのコミュニティがコンフォートゾーンになって、ファッションを介して社会問題について話しやすい空間ができたらなという想いで、MIMOを立ち上げました。これは、同世代に向けた私の、まず第一歩のアプローチでした。

 次に『ELLE girl』という雑誌がありますが、マネージャーさんと一緒にこういう企画をやりたいんです、とお話しにいきまして。

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 どういう企画かというと、この写真は生理用品や生理についても話しやすくしようというテーマでYouTube動画を撮ったときのものですけども、例えば大手のファッションブランドさんに取材に行って、私が直接取材して感じたことを発信する、そういったYouTube番組の連載を開始したりしました。

 あとは私は『KitKat(キットカット)』のYouTubeチャンネルで企画と制作と出演をさせてもらっているんですが、キットカットというブランドは日本ではパッケージが(プラスチックではなく)紙になっているんですね。どんどんリサイクル素材に変わっていく過程で、それに伴ってキットカットのYouTubeチャンネルを開設しています。その中で、実際に私が北海道の羅臼という場所に、北海道大学の研究チームに同行させてもらって、マイクロプラスチックの研究を海に実際に出てやる。海水を取って、その中にどれぐらいマイクロプラスチックが入っているのかとか、そういった実際に足を運んで取材させていただく機会もあります。

 岐阜県に取材に行った時のこの動画は、旅を介して、もっと気軽にエンターテイメントで社会問題とかについて発信できたらいいよね、という企画なんですけど、それが伝わる一つの動画になっているかなと思うので、ご覧ください。

 いかがでしたでしょうか、YouTube動画。今回の動画は2分半ほどの動画で、岐阜県のすごい自然豊かな様子を発信しました。そこのエピソードの中では古民家プロジェクトであったり、物を長く使うことはなぜ大事なのかということだったり、よく自然に触れ合ったりしたんですが、今こういったご時世で、年齢関係なく特にメンタルヘルスに影響が出ている方もいると思うので 自然に触れることの大切さ、マイナスイオンに触れることの大切さなどを発信しています。

 先ほどのキットカットや『ELLE girl』など、企業とのコラボレーションを最近私としては増やしているんですけれども、企業だけではなく、コミュニティを通じて同世代と繋がったり、あとこれからはぜひ自治体の方とも協力していきたいなっていう想いはあります。

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 つい先日、「Z世代のみんなが今の社会に対して感じている不安や心配事は?」という質問を、自分のInstagram上でさせていただいたところ、すごく反響があったんですね。

 こちらが皆さんの答えです。画面だと見にくいかと思うんですけども、300件近く、こういった一言の返信や長文もいただいて。

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 例えばそのうちこんな3つのことが届きました。1つ目が「政治が信用できない」。2つ目が「自分がおばあちゃんの時、地球が心地よく住めている状況なのか心配、子ども作っていいのかも心配」。私がピックアップした最後のは「僕たちがこれからの将来を担っていくのに、いろんな挑戦しやすい環境を作ってくれない」ということで、若者ならではの声が届いたんじゃないかなと思っています。

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 この3つはたくさんある中の、本当にごく一部なんですけども、大人に対する文句(?)が多かったなという印象があって。確かに日本は、今の若者に対してあまり優しくない印象はありつつも、同時に同じZ世代として感じるのは、もっとインターネットの力を使って、もっともっといろんなことがしやすくなった、行動しやすくなった時代でもあると思うので、もっと若者ならではの勇気じゃないですけども、何か一緒に引っ張っていけたらいいなと思います。今回こういったInstagramでご意見をいただいて、何かの声を持って、背負って、次のアクションに動きたいなって思った次第でありました。

 そんな中でも、こんな素敵なメッセージ、意見もありました。「買い物も政治も「投票」という意思を持って俺たちが世の中を変えていく」。気が合いそうだなって思うようなコメントだったんですけども、こういったようにポジティブな考えを持っている、「これからどんどん自分たちが変えてくぞ」「上の世代がやっていたことを変えてくぞ」と考えているZ世代もいますので、こういう方たちをどんどん私が率先してソーシャルメディアやテレビに出ることで、もっと応援ができたらなと思っています。

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 私も本当に、いただいたコメントと同じように、よく使っている言葉があります。それは『買い物は投票』という言葉です。ヨーロッパとかだとよくある考えなんですけれども、改めて考えると、私たちが毎日一生懸命働いて、お給料もらいますよね。その給料をどういった会社に使っていくのか。例えば、今でこそSDGsに積極的に取り組んでいる会社ありますよね。そこにお金を払うのか、コーヒー1つにしても、A社に行くのか、B社に行くのかで非常に大きなインパクトになるということが日本の皆にわかってほしいことだなと、特に思います。日々行っている「買い物」からインパクトの大きさを知ってもらいたいなと思っております。

 最後にはなりますけども、このような活動とかコミュニティを持ったり、発信をしたり、発言をすると、日本だと「アクティビストなの?」とか「環境活動家なのね」という言葉をよくいただくんですけども、あくまでも私はモデルという肩書きで、引き続きこういう活動を発信していきたいなと思います。というのも、日本ではなかなかまだセレブリティ、芸能人が発言しにくいというところもあるので、どんどんまずエンターテイナーが率先して発信して、そしてその先に皆さんが会話しやすい世の中になったらなという想いで、今こういう活動をさせていただいております。今日の講演が何かお役に立てたらいいんですけども。Z世代としてというか、これからまだまだ長い人生だと思いたいので、引き続き頑張っていきたいと思います。

長谷川ミラ

 モデル。南アフリカと日本のミックス。東京生まれのZ世代。2017年Netflix「テラスハウス ALOHA STATE」出演。同年ALL GENDER向けの自身のブランドを立ち上げ、その後ロンドンの名門美大(セントラル・セント・マーチンズ)に入学。モデルとして雑誌やTVだけでなく、自身のバックボーンやブランド、社会問題などを自由に発信し"私"を表現する、新世代を担うオピニオンリーダー。またファッション×社会問題オンラインコミュニティMiMoTokyo代表。J-WAVE「START LINE」(毎週金曜16:30〜)でナビゲーターを務めている。
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