Tokyo Embassy Talk:
デンマークの外交官が賞賛する、緑あふれる安全安心な都市
--東京で生活をしてみて、いかがですか?
東京の人々はとても親切で、よく人助けをしてくれますね。つい先日、義理の両親が来日した際にも、たくさんの人に助けていただく機会がありました。また、電車の中といった公共の場での携帯電話の使い方にみてとれるように、人々のマナーがよいので、そういったことが東京をとても居心地のいい場所にしていると感じます。私にはデンマークから連れて来た10代の息子が3人いるのですが、とても騒がしいので、ここでは文化の違いを実感させられますね。
もうひとつ、治安がいいので親が子どもの安全を感じられる都市だということも重要ですね。ここは、日が暮れても子どもたちの安否を常に心配をする必要がありません。デンマークもとても安全な国ですが、日本はさらに安全であると感じます。だからこそ、東京では自由に、どこへでも行くことができるのです。
--東京散策は、どんなところへ行っていますか?
東京は広大で、自然もたくさんありますし、多種多様なレストランやカフェもあり、無限に冒険できます。私の夫は都市計画の専門家なので、都内のあちこちへ一緒に出かけるのが大好きです。それぞれの地域には独自の建築や文化があって、それぞれが小さな都市のように感じられます。新しい場所へ行き、新しい駅で降りてみると、まったく別の街が広がっています。私の住まいは中目黒ですが、勤務先は隣の代官山エリアで徒歩圏内なので、この辺りには特に親しみを感じます。目黒川沿いをランニングすれば、都心にいながら季節の移り変わりを感じられますし、川沿いのカフェやレストランも素敵でお気に入りの場所です。
--アウトドアがお好きのようですが、東京の自然についてはいかがですか?
東京は、かなり緑豊かな都市ですよね。まったくコンクリートジャングルではないです。活気に満ちた都会でありながら、山や海へのアクセスもいいですし、都会と自然、両方の良さを兼ね備えた都市ですね。代々木公園など、東京を代表する公園だけでなく、都内には小さな緑地や公園が点在していて、私もそのような緑のある風景を心から愛しています。家の近所の公園にはちょっとした農園もあるんですよ。東京は緑を大切にしていることが伝わってきます。
--緑の話題が出ましたが、ご自身も持続可能な開発目標に取り組まれているのですよね?
デンマークは国として、グリーン・トランジション(環境への配慮や持続可能性を重視した社会への移行)に力を入れています。デンマークの人々は、率先してグリーンエネルギーを選んだり、(車ではなく)自転車を利用したり、中古品を購入したり、エコフレンドリーな取り組みにどんどん切り替えています。私は日本でもこういった取り組みを広げるサポートをしたいと思っています。
また、デンマークは平等も重視しています。私自身も夫とともに、息子たちには料理や掃除、洗濯などの家事を積極的に教えています。将来、彼らがパートナーと生活をするようになっても必要とされるスキルだからです。
東京も同様ですよね。特にパンデミック中から、父親たちが積極的に子どもたちの生活に関わり、保育園や学校に送迎している姿をよく見かけるようになりました。日本でも家庭生活や育児に積極的に参加する父親が増えているのは、とてもいい傾向ですよね。
<デンマークの魅力>
Q1. 一度は訪れて欲しいデンマークの都市は?
天気さえよければ、夏のコペンハーゲンがおすすめです。デンマーク人は(少なくともデンマーク人にとっては温かいと感じる)海で泳いだりして、夏の長い夜を存分に楽しみます。(年間を通して、朝仕事に行く前に泳ぎに行くのが一般的ですが)それから、夏のコペンハーゲンは、運河沿いでくつろぐ人でいっぱいです。この季節、人々はとてもリラックスしたムードで、公園や陽当たりのいいベンチなどくつろげる場所を見つけては、気軽に友人とビールやコーヒーを楽しむのです。そんな楽しみ方ができるのが、コペンハーゲンの素晴らしいところです。
Q2. 母国語で最もお気に入りの単語は?
デンマークには「ヒュッゲ」という言葉があります。長くて暗い冬があるからこそ、デンマークの人々は、長く過ごす家の中を居心地がよく快適に過ごせるようにします。だから、家具やインテリアデザインにもこだわるのです。それから、たくさんキャンドルを灯し、暖炉でぬくもりや心地よさを演出します。家に人を招き、招かりたりして、自宅で一緒に料理をすることを楽しみます。慣れ親しんだ場所でくつろぐためにも家という空間のクオリティが重要なのです。「ヒュッゲ」は、大切な人たちと気持ちよく過ごせる空間をつくり、楽しい時間をともにするという概念なのです。
ディナ・アーマンド・ハンセン
写真(人物)/梅田直希
翻訳/長沢光希