Next Generation Talent:
世界で活躍する人材を育む慶應義塾大学のPEARLプログラム

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 PEARL(Programme in Economics for Alliances, Research and Leadership)は、すべて英語による講義を行う慶應義塾大学経済学部の学士課程だ。3年生に在籍するオ・ドンジュンさんは、グローバル化がますます進展する東京の未来に期待を膨らませている。
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オ・ドンジュンさんの将来の夢は、歴史ある慶應義塾大学で教鞭を執ることだそうだ。

 韓国でインターナショナルハイスクールに通っていたオ・ドンジュンさんは、進路を選択する中で慶應義塾大学の紋章の由来である「ペンは剣よりも強し」という格言に出会った。シンプルながらも核心を突くこの言葉に触発された彼は、日本の名門大学進学を目指し、TOFELと大学進学適性試験(SAT)で高スコアを獲得するために猛勉強をした。その甲斐あって、現在は慶應義塾大学に通い、この格言を胸に日々学んでいる。

グローバルな環境でコミュニケーションを学ぶ

 英語が堪能なオさんは、母国語の韓国語を合わせて3つの言語を操るトライリンガルになるために日本で勉強しようと決意したそうだ。「来日して以来、日本の文化にどっぷり浸かるよう意識しています。カラオケで歌えるようにJ-POPを練習したり、コーヒーサークルに参加したり、バドミントンクラブにも入りました。こうした日本語や日本文化を知るための活動に加え、世界中の人たちとのネットワーク作りにも努めています。PEARLプログラムの学生や教授たちは、多様な文化をもつ国々から集まってきているので、グローバルな環境でリーダーシップやチームワークについて多くのことを学べます」

 オさんが高いコミュニケーションスキルを獲得できたのは、日本の首都である東京で学んでいるからだという。慶應義塾大学に通うさまざまな国籍の留学生仲間に囲まれ、エネルギッシュな街で大学生活を送る中で、さまざまな働き方があることを知り、個性的な人々にも出会うことができた。「大学でさまざまな人と関わることで、物事を進める方法は一つではないということに気づきました。それぞれ文化的、教育的に異なる背景をもつ学生が集まっているからこそグループで活動する上で強みになります。今ではみなが同じやり方で取り組むのではなく、それぞれの長所や多様なスキルを尊重して活かせるようにしています」。グローバル化と多様化が進む今こそ、こうしたアプローチが必要なのだ。

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留学してからは、「自分を改革する旅に出ているよう」と話すオさん。「慶應の同級生たちは、自分を大事にしながらも、他者への思いやりを大切にしています」

グローバルな考え方を日本へ持ち帰るという夢

 オさんは、さらにグローバルなステージを目指して、卒業後は別の国で修士号を取得したいと考えている。「PEARLプログラムの学生は志が高く、日本や海外の大学院への進学を考えている人も少なくありません。ここのグローバルな環境は、世界へ自由に羽ばたいていいのだと教えてくれました。私は修士課程を終えたら、また日本に戻って慶應義塾の教授になりたいです」。現在、彼が最も影響を受けている人物は、所属するゼミを担当する笹原彰准教授だそうだ。笹原准教授は慶應義塾大学を卒業後、一橋大学の大学院修了を経てアメリカの大学院へ進み、慶應義塾大学の教壇に立つことになった。

 「東京は真のグローバル教育を受けられる素晴らしい場所です。多様な国際文化と日本の伝統的な価値観が共存しており、東西が融合する理想的な場所ではないでしょうか。伝統的な物事から着想を得るという日本の発想に影響を受けました。それまで、新しい発想は突然湧いてくるものだと思っていましたが、実際はそうとは限らないのです。伝統的なものを発展させるという日本のユニークな考え方を知ってからは、一見新しいアイデアの中にもこれまでにもあった要素が含まれており、それは決して悪いことではないと思うようになりました」

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PEARLプログラムの授業の一環でプレゼンテーションを行うオさん。Photo: courtesy of Oh Dongjun

国際的な教育が進める日本のグローバル化

 現状を変えようと努力している新しい世代の学者や学生たちの存在によって、長時間労働や厳格な伝統といった、外国人が抱く東京のイメージは変わりつつある。「笹原准教授は、博士号を取得してから間もなく、研究熱心で新しい風を吹き込んでいる人です。日本の主な教育機関の多くは、より柔軟で新しい社会に向けて、さまざまなバックグラウンドの教職員を採用する傾向にあると感じています。日本は伝統的なところもありますが、伝統的なものに加えて新しいものを構築することで新しくエキサイティングなものを生み出し、変化を起こし続けています」

 慶應義塾大学で学ぶオさんは、経済学のみならず非常に多くのものを学んでいる。寛容さや他を尊重し協調することが重視される世界の雇用環境において、彼の知性とコミュニケーションスキルは高く評価されるに違いない。チームワークや多様性の尊重といった学びを通して、PEARLプログラムでは「ペンは剣よりも強し」の志を持って誠実に生きる次世代を育成している。

オ・ドンジュン

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2000年、韓国ソウル生まれ。2019年にチェンシムインターナショナルアカデミーを卒業。現在は慶應義塾大学のPEARLプログラムに在籍中。国際社会で活躍できるキャリア形成のために国際経済学を学んでいる。

PEARLプログラム

PEARLはProgramme in Economics for Alliances, Research and Leadershipの頭文字で、英語で経済学を学び、4年間で学位取得ができるプログラム。さまざまな専門分野で能力を発揮する国際的なリーダーを育成することを目的としている。2023年6月現在、21の国と地域から約400名の学生が学んでいる。
https://www.econ.keio.ac.jp/undergraduate/pearl

慶應義塾大学

https://www.keio.ac.jp/ja/
取材・文/氏家ジェシカ
写真/椎木浩司
翻訳/スヴェンソン華子