Commerce Connect Tokyo:
多様性を生かして南アフリカと日本のビジネス関係を強化する

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 東京における南アフリカのビジネスの現状は?在日南アフリカ商工会議所(SACCJ)の代表が、東京のビジネス環境やさらなる貿易支援の必要性について語った。
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SACCJのサイモン・ファレル会頭(右)とフランソワ・ディヴィリアーズ財務・デジタル担当第一副会頭。港区にあるイノベーションハブ、CIC Tokyoに入居するカスタムメディア社のオフィスで。

 2008年に設立された在日南アフリカ商工会議所(SACCJ)は、二国間の貿易と通商を促進し、友好と文化理解を深めることを目的としている。SACCJの会頭で、B2BのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型デジタルマーケターのカスタムメディア社の編集長、日本外国特派員協会の監事も務めるサイモン・ファレル氏と、財務・デジタル担当第一副会頭で、ホーグオートライナーズ社日本法人の代表取締役でもあるフランソワ・ディヴィリアーズ氏に話を聞いた。

-- SACCJについて教えてください。

ディヴィリアーズ:私たちはボランティアベースの商工会議所で、アメリカやイギリスの商工会議所のような会員数はありません。在日南アフリカ共和国大使館と緊密に協力し、両国の発展のための経済的機会を開拓しています。この2国間の貿易は、原材料と卸売食品が中心で、南アフリカにとっての課題は、消費財の面で日本での存在感が薄いことです。

-- SACCJが他の商工会議所と一線を画しているのはどんな点ですか?

ファレル:理事会の多様性です。フランソワと私はそれぞれ第一副会頭と会頭に就任して1年目ですが、15年の歴史の中で最も多様性のある理事会を組織できたことを誇りに思っています。世界で最も進歩的な憲法と、2023年5月に加わった手話も含めて12の公用語を持つ国として、私たちには他の多くの国々よりも包摂と多様化の大きな機会と課題があります。私たちは現職に選出された際、性別、文化、年齢、経験、キャリアに基づいた多くの異なる視点とスキルをもたらすことのできる理事を積極的に採用し、力を合わせて発展させていくことを誓いました。現在もその努力を続けており、その成果は、ビジネスやチャリティ、イベントに多くの参加者が集っていることに表れていますし、ウェブサイトやニュースレターでも紹介しています。

-- SACCJのメンバーで、東京で成功している個人または企業を教えてください。

ファレル:南アフリカは、消費と輸出を国内の食料生産に大きく依存しており、そのため為替変動に翻弄されることがあります。日本が南アフリカから輸入しているのは、魚介類、果物、穀物、野菜、ナッツ類、コーヒー、そしてもちろんケープセラーの有名なワインや、ガスコ社の健康的なルイボスティやハニーブッシュティーなどもあります。しかし、現金ベースでは、プラチナとメタルの世界有数の生産者であるインパラ・プラチナム・ホールディングスなどが輸出する、宝石と金属という代表的な輸出品と比べると、はるかに少ないのです。南アフリカはアフリカ最大の食品輸出国ですが、2023年11月ついに日本に輸入解禁となったアボカドのように、私たちの国のおいしい食物をもっと受け入れてほしいですね。SACCJはアドボカシー活動には直接関与していませんので、それは政府の専門家に任せ、メンバーの意見を求められたときに助言をしています。

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南アフリカは優秀なスポーツ選手も多数世に送り出している。写真左は同国のラグビー界の英雄、故チェスター・ウィリアムズ氏のサイン入りユニフォーム。

-- 東京がビジネスをする上で特別な理由は何ですか?

ディヴィリアーズ:東京にはあらゆるものが集まっているので、ビジネスチャンスは無限にあります。東京は進化し続ける多文化都市で、さまざまな活動が行われ、人々はネットワーク作りに積極的です。設備も整っており、世界の他都市と比べても、たいていのことが効率的かつ安価に実行できます。私が以前から携わっているロジスティクスの分野に関しては、日本ほど効率的な国はありません。他国で生じるような遅れが日本では見られないのです。

ファレル:清潔さ、安全性、セキュリティについてのお決まりの話はすべて真実ですが、東京について過小評価されがちなのは、その創造性だと思います。東京はイノベーションのハブです。海外には、日本は何も発明したことのない型にはまった国だと考える人もいますが、東京に来るとそれがいかに間違っているかがわかります。クリエイティブなことに関心のある人は、日本、特に東京に来るべきです。

-- スタートアップが東京でビジネスを始める前に考慮すべきことを教えてください。

ディヴィリアーズ:東京では何事も一貫性が大切です。顧客とサプライヤーの立場を尊重する必要があります。ブランドが市場よりも強いと考える、欧米中心のアプローチで参入しても東京では決してうまくいきません。適切なパートナーを見つけなければなりません。大切なのは良いバランスを見つけることです。日本独自のやり方にこだわりすぎると、日本市場への参入や拡大を目指す企業の長い列に取り残されてしまいます。逆に、極端なアプローチでは、その列に並ぶことすらできません。信頼できるものであることと、自分が求めていることに向き合い、メッセージに柔軟性を持たせることが重要です。

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南アフリカの食品に対して日本は市場をもっと開放すべきだとファレル氏。

-- 南アフリカ企業が東京で直面している最大の課題は?

ディヴィリアーズ:南アフリカ企業は忠誠心が高い傾向があり、それは日本のビジネス文化にマッチしているのですが、彼らはいろいろな選択肢を検討しないこともあり、欠点にもなり得ます。もう一つは、南アフリカのグローバル政策が、特に自由貿易協定(FTA)に関して企業が参入する際の障壁になることです。日本と南アフリカはFTAの締結が遅れているため、日本では南アフリカ産ワインなどの価格が高すぎることがよくあります。

-- 南アフリカの企業や起業家を支援するために、東京都に求めたいことはありますか?

ディヴィリアーズ:多くの国に比べて日本は非常に協力的で、マネジメントも行き届いています。情報もすべて揃っています。ただ、特に日本語を話さない人にとって、情報をもっと簡素化して見つけやすくするといいと思います。当商工会議所としては、南アフリカの輸入業者の中でも中小企業により目を向けてもらいたいです。また、我々が都の職員や政府高官と定期的に交流することも非常に有益だと考えています。

在日南アフリカ商工会議所

https://www.saccj.com/
取材・文/マシュー・ハノン
写真/アンナ・ペテク
翻訳/前田雅子