「東京都パートナーシップ宣誓制度」でより安心して暮らせる街へ

 「東京都パートナーシップ宣誓制度」が2022年11月1日にスタート。「"自分らしく"を、この街で。」をキーメッセージとするこの制度は、当事者にとってどんな意義があるのだろうか。
パートナー関係にある長村さと子氏(左)と茂田まみこ氏(右)。知人男性から精子提供を受けて授かった二人の子どもはもうすぐ1歳になる。

性的マイノリティの人々が暮らしやすい環境づくりにつなげる制度

 同性婚が認められていない日本では、同性パートナーをもつ人たちにさまざまな支障が生じている。「東京都パートナーシップ宣誓制度」は、東京都がパートナーシップ関係にある二人からの宣誓・届出を受理したことを証明する制度で、公的サービスが円滑に利用できるようになる仕組み。東京都がこの制度を周知・啓発することで民間事業者の理解も深まると期待されている。

 東京で暮らす当事者は、制度のスタートをどう受け止めているのか。20214月にパートナーシップ・ファミリーシップ制度を開始した東京都足立区で、利用第1号となった長村さと子氏と茂田まみこ氏は、東京都でもいち早く制度を利用。二人に今に至るまでの道のりや社会の変化について話を聞いた。

--お二人がこれまでたどってきた道のりを教えてください。

長村さと子(以下、長村) 彼女は、私が経営していた店のお客さんでした。しばらくして付き合い始め、結婚式を挙げたのは2015年です。彼女は、子どもが欲しいという私の希望もあっさりと受け入れてくれて妊活を始めました。私たちが働きかけたこともあり、20214月に足立区がパートナーシップ制度と、都内初のファミリーシップ制度を開始することになり、ずっと住んでいた新宿区から足立区に引っ越したんです。ちょうど妊娠した時期と重なりました。

茂田まみこ(以下、茂田) 区役所に母子手帳をもらいに行く時、私も付いて行ったんです。係の人に「足立区パートナーシップ・ファミリーシップ制度」の受領証明カードを見せたところ、私たちの関係をすんなりと理解してもらえて、スムーズに手続きができましたし、とても気が楽になりました。

長村 結婚式を挙げる時に親から「そんなことをする必要がある?」と聞かれたのですが、男女のカップルにはそんな疑問をもつ人はほとんどいないですよね。だけど性的マイノリティのパートナーをもつ人たちの中には、最初から、周囲に祝福されることを諦めている人もたくさんいると思います。子どもをもつことも「親のエゴだ」と非難する人もいました。私たちは「子どもが欲しい」「子育てをしている」というLGBTQ+の人々をサポートする「こどまっぷ」を設立し、LGBTQ+の家族がより住みやすい社会を目指して日々活動しています。

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2015年に結婚式を挙げた二人。参列した長村氏の親は、友人に祝福されている二人を見て「これから応援する」と言ってくれたそう。Photo:Nagamura Satoko

--「東京都パートナーシップ宣誓制度」はどんな意味がありますか?

茂田 この街で安全に、安心して暮らせるようになります。たとえば、パートナーが事故にあって病院に運ばれた時に証明書を見せるだけで関係を証明できることには大きな意味があるんです。東京都が始めたことで、他の自治体の指針にもなりますし、ある意味、未来を象徴するできごとだと思います。

 ただし法的な根拠がなく、本質的な問題の解決には至らないことも事実です。子どもへの配慮も抜け落ちています。現在は子どもの名前を証明書の「特記事項欄」に記載できるとされてはいますが、これは大人のための制度であって、子どもの権利を守るには不十分だと感じています。ちなみにG7の中で同性婚が認められていないのは日本だけです。人権意識が遅れている国を先進国と呼ぶことに違和感があります。

長村 人はそれぞれ自分なりのマイノリティ性をもっていると思うんです。たくさんの人が暮らす東京は、マイノリティの集合体です。だから仲間も見つかりやすい。その東京にこうした制度ができた意味はとても大きいと思います。

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「制度が二人の関係を考えるきっかけになると喜ぶ人がいてうれしく思います」と長村氏。「子どもをもつことが一つの選択と考える若い世代も増えています」と茂田氏。

--これから社会がどう変わっていくことを期待しますか?

茂田 性的マイノリティへの認知は広がっていますが、まだ理解が深まったという状況ではありません。自分とは異なる存在を不快に思ったとしても、それで他人の尊厳を傷つけていいことにはならないとわかってほしいです。それぞれが自分の感情に責任をもつことで、互いの違いを尊重できるようになっていくのではないでしょうか。

長村 選択肢があること、そして孤立しないこと。一人でも生きやすい社会であってほしいです。普通の枠からはみ出ると変だと思うのではなく、「私たちは皆違う」という前提のもと、尊重し共存し合える社会をつくり、次世代に引き継ぐことこそが、これからの課題ではないでしょうか。マイノリティに優しい世界は、誰もが暮らしやすい社会につながっていくと思っています。そして法律上の異性であれ同性であれ、等しく選択肢を得られるようになっていってほしい。「東京都パートナーシップ宣誓制度」に法的効力はないですが、首都・東京が動き出すことで、同性婚の法制化への確実なステップになると期待しています。

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長村氏が経営する「足湯cafe&barどん浴」は、ジェンダー、セクシュアリティ、人種を問わず、誰もが安心してくつろげる場だ。奥が掘りごたつ式の足湯席になっている。Photo:Nagamura Satoko
取材・構成/今泉愛子
撮影/殿村誠士