東京在住歴18年! 世界的ギタリストが東京から受けた影響とは
--2004年に東京に移住されました。J-POPが好きだったことが大きな理由だったそうですね。
1990年代、日本にはツアーでよく来ていました。当時の日本はJ-POP 黄金時代だったと思います。それまでの日本のポップスは、欧米発の音楽のコピーのような、あまり質の良くないもののように私には聞こえていました。でも、1990年代に入ると、華原朋美の『I'm Proud』や、つんく♂がモーニング娘。のために書いた曲など、とても日本的なサウンドになった。シャ乱Qのボーカリストだったつんく♂は、モーニング娘。の総合プロデューサーとして活躍しましたよね。
--では、東京のプロデューサーで一緒に仕事をして一番楽しかったのは誰ですか?また、東京的な美意識が、あなたに音楽的な影響を与えたと思いますか?
一人は間違いなくヒャダイン(前山田健一)でしょう。彼は本当に天才です。ソロ活動もしていますが、アイドルグループももいろクローバーZの仕事でお馴染みですよね。おそらく、つんく♂から多大な影響を受けているように思いますが、それを新しい形にしたイノベーターです。ほかには、Linked HorizonのRevoとの仕事も楽しかったですね。彼はアニメ『進撃の巨人』の主題歌や、『美少女戦士セーラームーンCrystal』のオープニングテーマ曲などを手がけています。
東京の素敵だなと感じるところは、(たとえばこの展望室の)窓の外に目をやると、どのビルも形が違うこと。それがとても東京らしい! どのビルもそれぞれに物語があり、それぞれ異なる存在感を放っている! 日本の音楽界でも、アーティストやプロデューサーによって、サウンドやアーティスティックなビジョンが全然違います。
--あなたのYouTubeチャンネルでは、日本のスナック菓子にインスピレーションを得たギターリフを披露していますね。
そうなんです! もともとスナック菓子が大好きなのですが、日本ではコンビニなどへ行くと、毎週のように新しい味のお菓子が発売されている。日本では「新食感」がとても重要なんです。それから、新しいフレーバーがしょっちゅう発売される。聞いたことのないようなフレーバーや、今までとは違う食感、色など、普通ならミックスしない要素をミックスする。そういう姿勢にいつも刺激を受けています。
--また、あなたは文化庁の日本遺産大使を務められたり、2017年から東京マラソンではライブパフォーマンスをされたりしていますね。
まず、外国人が日本遺産大使という大役を任されるなんて、本当にすごいことです。任命された時に日本遺産プロジェクトの公式テーマソングづくりを依頼されて、最高にワクワクしました。それが私を選んでくれた理由の一つだといいのですが。私がよく海外ツアーを行っていることも、任命理由の一つかもしれませんね。東京マラソンでの演奏も、とてもエキサイティングですよ。みんなが自分の前を走り去っていくのは、ちょっと不思議な気分ですけどね(笑)。
--コロナ禍前後では、東京に住む外国人の暮らしは変わったと思いますか?
(ロックダウンなどで)暮らしが一変した国々と比べれば、そんなに変わらなかったと思います。手洗いとうがいを徹底し、マスクを着ける、それくらいです。日本の素晴らしい部分は全く変わっていないと思います。
--海外から東京への訪問を考えている人たちに一言お願いします。
東京は、絶対に訪れるべき都市ですね。私のように情熱的な夢がある人ならなおさらです。海外では、日本という別の惑星みたいな所で夢をかなえるなんて、絶対無理だと思う人も多いでしょう。でも、そんなことはありません。自分が情熱を抱いている領域で、ある程度日本語を話せるようになれば、あとは自分のスキルを最高に磨くだけでいい。なぜなら日本人はいつも新しいアイデアを歓迎してくれるし、日本語を習得する時も助けてくれますからね。日本の人たちは、とても励ましてくれます。ぜひ東京に来て、自身の目でいろいろ見て、「今」を感じてほしいですね。とてもエキサイティングですから。
マーティ・フリードマン
写真/マイケル・スミス
翻訳/藤原朝子